黒田研二のデビュー作
2000年刊行作品。第16回のメフィスト賞受賞作品。
講談社文庫版は2008年に登場。ノベルス版が出てから八年もかけて文庫化されるのは珍しい。ふつうこれくらい間隔が空くと、文庫版は出さずにスルーされそうだけど、地道に実績を積み重ねて来たところが評価されたのだろうか。
ちなみにメフィスト賞の前後回、第15回の氷川透『真っ暗な夜明け』 、第17回の古泉迦十『火蛾』といずれも文庫化されておらず、メフィスト賞でデビューしたからと言って、まったくその先は保障されていないわけで、実力社会の厳しさを感じさせられる。
ちなみに、作者の黒田研二(くろだけんじ)は1969年生まれのミステリ小説作家。本作でデビュー後、年1~2作ペースでコンスタントに新作を上梓しており、息の長い作家となっている。
特にホラーゲーム『青鬼』のノベライズ版はほぼ毎年のように新刊が出ており、ひそかに黒田研二の代表作になってしまっている気がする(本稿時点で20冊も出てる!)。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
黒田研二のデビュー作を読んでみたい方、最初期の黒田作品に興味がある方。この時代のメフィスト賞作品がお好きな方。タイトルに興味をそそられた方。先の読めない展開にドキドキしたい方におススメ。
あらすじ
もっとも幸福な日である筈の結婚式当日に凄惨な陵辱を受けた祥子。続けざまに最愛の人であったユウ君の死を告げられ絶望の淵に突き落とされる。一方「僕」はついに恋人である祥子にプロポーズ。めでたく承諾の回答を得て結婚式に臨む。しかし式の当日祥子は突然失踪し、教会には同じく祥子と挙式を迎える筈だったという二人の男が現れる。
ここからネタバレ
二人の視点で交互に綴られる物語
あらすじを読んで何を言っているのかさっぱりわからないと思うが、そういう話なのである。
本作は祥子の世界と「僕」の世界が交互に語られてストーリーは進行していく。両者のエピソードは、明確に矛盾しており、全く話が食い違うので、どう読んでもこれは叙述モノなんでしょ、ってひねくれて読んでしまうのがスレた読者の駄目なところかもしれない。陵辱シーンやらアングラAVやらを絡ませて来るところも、少々アピールポイントが下世話過ぎていかがなものかと。読み手を限定してしまっている側面もあって勿体ない気もする。
タイトル名ともなっているウエディングドレスのギミックはなかなかに美しい。取り散らかっているように見えた物語が、最後に綺麗に収束していくさまは一読の価値ありかと。