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『ねじの回転』恩田陸が描く226事件、そして運命への挑戦


エスエフ作品の刊行が相次いだ2002年の恩田陸作品

2002年刊行作品。集英社「小説すばる」に2000年11月号から2002年1月号にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。サブタイトルは「FEBRUARY MOMENT」。

この時期の恩田陸の傾向である超長編化の例に漏れず、444頁の大ボリューム(単行本版当時)ではあるが、二段組みにはなっていないので『ロミオとロミオは永遠に』に比べるとやや少ない。リーダビリティには優れているので読み始めればラストまでは一気であろう。

集英社文庫版は2005年に登場。文庫化に際して上下巻に分冊された。解説は田中啓文が担当している。

ねじの回転 上 FEBRUARY MOMENT (集英社文庫) ねじの回転 下 FEBRUARY MOMENT (集英社文庫)

2002年の恩田陸は、『劫尽童女』『ロミオとロミオは永遠に』エスエフ作品の刊行が相次いだわけだが、そのラストを飾ったのが本作。出来としてはこれが一番かなあ。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

226事件に興味のある方。昭和の戦前期を舞台としたエスエフ作品を読んでみたい方。恩田陸のタッチで昭和史を振り返ってみたい方。恩田陸のエスエフ作品がお好きな方におススメ。

あらすじ

昭和11年2月26日。陸軍の急進派将校たちに率いられた1,400人の兵士が参謀本部、陸軍省等を占拠。世に云う226事件の始まりである。しかしこの事件は近未来の国連によって監視されていた。後世に都合の良い歴史を作るため、「不一致」の度に修正され「再生」され直す226事件。事件の首謀者たちは未来からの干渉に反発し、自らの意志で歴史のやり直しを計ろうとするのだが……。

ここからネタバレ

226事件を舞台とした時間モノ

未来からの干渉を受け、執拗に歴史の改変を強いられる過去世界。持ち込まれた再生装置はアナログな芳香を放ち、昭和初期という時代設定と不思議に調和していて、なんとはなしに高野史緒の『ムジカ・マキーナ』や『カント・アンジェリコ』を想起させられた。レトロフューチャーなミスマッチ感がまず興味を引いた。この「シンデレラの靴」は絵で見てみたいなあ。

それにしても恩田作品のキャラクターとして石原寛爾や安藤輝三大尉に出会えようとは思わなかった。敗北の運命を知りながら、敢えてなお分の悪い賭に打って出ようとする男たちの執念や葛藤が実によく描かれていてこの点は見事だった。

終盤一気に畳み過ぎたきらいはあるけど、時間エスエフとしての切れ具合はまあ及第点。主人公が終盤で何故あのような行動を取るに至ったかが、書き込み不足に思えてやや減点。実在の登場人物たちの存在感が重すぎて、国連組はやや押され気味だったかな。

226事件を描いた作品ならこちらも

226事件を舞台としたエスエフ作品としては、宮部みゆきの『蒲生邸事件』が有名だろう。恩田陸の『ねじの回転』とはまったく切り口が異なるが、こちらも非常に魅力的な作品となっている。おススメ。

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