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『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

ケイロニアの皇位継承問題が再燃、グイン・サーガ続篇134巻『売国妃シルヴィア』

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宵野ゆめ版グインの二冊目

2014年刊行。正篇の続篇としては四冊目。宵野ゆめグインとしては132巻の『サイロンの挽歌』までは『グイン・サーガ・ワールド』に掲載されていた作品の文庫化であったが、この巻より書き下ろしとなっている。

売国妃シルヴィア (グイン・サーガ134巻) 

あらすじ

幽閉中であった皇女シルヴィアが行方不明となる。サイロンに現れた死霊の告発により、蔓延する黒死の病の元凶とされた彼女には「売国妃」の汚名が着せられる。一方、アキレウス大帝の病状悪化を受け、ケイロニア宮廷ではかねてよりの懸案となっていた皇位継承問題が議題に上る。皇位を継ぐのは果たして誰になるのか。

この巻で起こること

例によって、未読の方が斜め読みしても判るように、この巻で起きた出来事をざっくりと所感つきでまとめていく。時間の無い方は、見出しと強調部分だけ読めば大丈夫なはずである。

「売国妃シルヴィア」誕生

サイロンに黒死病をもたらし壊滅的な被害を与えた(という風説に基づく)罪状により、シルヴィアに「売国妃」の通り名が与えられる。

グイン・サーガ第三巻『ノスフェラスの戦い』の冒頭部には以下の記載がある。

ケイロニアにいったん破滅をもたらすにいたった<<売国妃>>シルヴィア

つまり、シリーズ最初期から「シルヴィアがケイロニアを売る」ことは予見されていた事態なのである。

ただ、今回彼女がケイロニアにもたらしたのは黒死の病であり、確かに壊滅的なダメージを与えたとはいえ、「売国」と呼ぶのは少々こじつけのように思える。積極的な外患誘致くらいしてくれないと、「売国妃」とは呼ばないのでは?

とはいえ、九死に一生を得たとはいえ、その身はグラ爺の手に堕ちたようで、シルヴィアの転落劇はまだまだ続きそう。遠からずこの通り名に相応しいことはやってくれそうな気はする。

アウロラ一行が正伝に合流

沿海州はレンティアの王女アウロラちゃんとその一行が、外伝の『宿命の宝冠』から合流。『宿命の宝冠』は宵野ゆめのデビュー作であり、自身がアウロラは使いやすいキャラクターなのかもしれないね(想像)。

外伝25巻『宿命の宝冠』の感想はこちらからどうぞ。

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アキレウス大帝死去

ササイドンでの選帝侯会議中の薨去。存命中にきちんと皇位継承問題に決着をつけておけば、こんなに話はこじれなかったのに。とは言うものの、序盤からの重要キャラクターの死であるだけに感慨はひとしお。

選帝侯会議はさまざまな陣営の思惑が絡んで会議は踊る状態に。すんなりグインを皇帝にというわけにはさすがにいかない模様。シルヴィアの伴侶であることがグインの権威の正当性を担保していたわけだからね。シルヴィアの皇位継承権は剥奪され、替わってオクタヴィアの皇位継承権が復活。時期ケイロニア皇帝が誰になるのか、決着にはもう少し時間がかかりそうだね。 

売国妃シルヴィア (グイン・サーガ134巻)

売国妃シルヴィア (グイン・サーガ134巻)

 

グイン・サーガ続篇135巻『紅の凶星』の感想はこちらから。

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