シリーズ二作目は文化祭巻!
2001年刊行作品。前作『イリヤの空 UFOの夏 その1』から僅か1ヶ月で早くも続巻が出ていた。当時はこんなに短い間隔で秋山瑞人の新刊が読めていたのである(遠い目)。
でもまあ、元は雑誌連載作品だから順当に出て当然か。本作も前作同様に電撃HP掲載作品に書き下ろし短編を加えて文庫化したものである。
あらすじ
浅羽直之の受難は続く。水前寺部長の命令とはいえ、伊里野加奈とのデートの約束を取り付けた浅羽。しかし二人の初デートは監視付きだった。ハプニング続きのドタバタ劇の果てに、浅羽は伊里野の秘密に触れることになる。終わらない夏。空前の盛り上がりを見せる文化祭。祭りの喧噪の中でそれぞれの想いが行き違う。
では例によって各編ごとに感想をば。まずは前作の続き……
正しい原チャリの盗み方(後編)
少しずつこの世界の謎についての言及がなされてきて、シリーズ3エピソード目にして、ようやく物語が動き始めたかな、という予感を持たせてくれる。「北」というのは、どうも海の向こうというよりは、陸続きの日本、東北部以北のような気がする。この緊張感、どことなく『ガンパレード・マーチ』に通ずるものある(例が古くてすまぬ)。ラストの散髪シーン、夕子視点でのクロージングがとても印象的。
十八時四十七分三十二秒(前/後編)
本作の裏ヒロイン、須藤晶穂にようやくスポットライトが当たる。勝ち気な女の子。想いに気付かない鈍い主人公。そして絶対に勝てそうにない正ヒロインの存在。頑張って文化祭であれこれ画策してるのに、最後の最後で美味しいところ全部ヒロインに持って行かれてしまう晶穂。既に相当可哀想なので、今後、もっと悲惨な役回りにならないことを祈らずにはいられない。
この作品世界、格別の思い入れがあるのか、なにか仕掛けがあるのか今のところ不明ながら、何が何でも季節は夏で通すつもりらしく、9月も後半だというのにまだ夏だったりする。夏の終わりの文化祭の喧噪。ここら辺は「うる星やつら」の『ビューティフルドリーマー』を思い出す(これまた古い例え)……。もはや学生じゃない読み手でも、この懐かしい雰囲気には、惹かれるもの大なのではないだろうか。
伊里野の過酷な境遇が次第に明らかになってくる中で迎えるラストシーン。相変わらずキメのシーンはため息が漏れるほどの美しさ。秋山節全開。頭の中でマイム・マイムのリフレインが止まらないのだった。
『イリヤの空 UFOの夏 その1』の感想はこちらから。
コミカライズもされていた
少し時間が余ったので、ちょっとだけ他メディア版のお話。
本作はカンノ画によるコミカライズ版が存在している。しかし刊行は2008年とかなり遅め。『電撃マ王』に連載されていたものをまとめたものだ。既に原作は完結しており(2003年)、OVA展開すら終わっていた(2005年)ので、メディアミックスというよりは『電撃マ王』の連載枠が埋まらなくて、売れそうなお話をマンガにしてみましたという感が強い。しかも全2巻と、原作をかなり圧縮した展開となっている。カンノの絵柄も駒都えーじ版とはかなり印象が違うので、ちょっと評価が別れるかな。
個人的には、全エピソード分改めてコミカライズして欲しいのだけど。
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- 発売日: 2008/06/27
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