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秋山瑞人『イリヤの空 UFOの夏 その1』ライトノベルのオールタイムベスト

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秋山瑞人の四作目にして最高傑作

2001年刊行。『E.G.コンバット』『鉄コミュニケイション』『猫の地球儀』に続く第4作。オリジナル作品としてはこれが第2作となる。ゼロ年代を代表するライトノベル作品であり、オールタイムベストをやっても上位に食い込んでくる作品ではないかと思う。もちろん秋山瑞人の代表作である。

秋山瑞人は未完の作品が多い作家ではあるが、本作を完結させたことで全て許されるのではないか?この一作を完結させたことで、他の全てが許されるという点では、田中芳樹における『銀河英雄伝説』的な作品と言えるかもしれない。

イリヤの空、UFOの夏 その1 (電撃文庫)

本作は『電撃HP』誌に掲載されていた作品に書き下ろし作品1作を加えて文庫化したもの。学園モノってこともあるのか、イラストは駒都えーじ。

あらすじ

浅羽直之、中学二年の夏休みはUFOの夏だった。非公認団体新聞部の名物部長に引きずられ、UFOを追い求め来る日も来る日も裏山での張り込みに明け暮れた日々。夏休み最後の夜。不毛な夏の日々のせめてもの気晴らしにと学校のプールを訪れた浅羽。それが不思議な少女伊里野可奈との出会いだった。

正統派学園ラブコメ?に見え隠れする悲劇の予感

犬も猫も出てこない。現代?を舞台とした正統派学園ラブコメ。

と、言ってもこの現代はかなり現実の日本とは違っている。平穏な学園生活の背後には敵国である「北」からの脅威があり。いつ始まるとも知れない戦争への不安が人々の心の中にはある。なにせ秋山瑞人なので、のほほんとしているだけのラブコメを書くわけがなく、そこはかとなく漂う悲劇への予感がたまらない。

では以下、各編ごとに雑感。

第三種接近遭遇

オープニング。出会い編。ボーイミーツガールである。

キャラクター紹介と状況説明にとりあえずは終始してみたって感じの一編。主人公は特に取り柄のないうすらぼんやり君(妄想癖アリ)。時々妙なことをしでかしてトラブルに巻き込まれるという、ラブコメの基本に忠実な設定。

しかし、改めて読み返してみるとこの出会いからして既に泣けるんだよね……。

ラブレター

ヒロイン伊里野可奈の紹介編。伊里野は感情をなかなか表に出すことが出来ず、他者とのコミュニケーションを取るのが極端に苦手な女の子。ドタバタの中にもシリアスな要素を織り込んでいて今後起こりうるであろう悲劇への伏線を撒いていく。ラブレターの件といい、入部届けの件といい、一つ一つの小ネタがいい味出している。

正しい原チャリの盗み方(前編)

原チャリ盗んじゃ駄目だってば(笑)。

遂に狂気の天才部長水前寺クンが本格的に活躍開始。キャラ的には『究極超人あ~る』の鳥坂センパイみたいなのを想像するといいと思う(って、もう通じないか)。学園モノにこういう破天荒なキャラは欠かせないよね。本巻では完結しないで、第二巻のこのエピソードは続いている。

というわけで、あと三回、毎週木曜日は「イリヤ」の感想を書いていく予定なので、お楽しみに。

イリヤの空、UFOの夏 その1 (電撃文庫)

イリヤの空、UFOの夏 その1 (電撃文庫)

 

続巻の感想はこちらから

『イリヤの空 UFOの夏 その2』の感想はこちら。

『イリヤの空 UFOの夏 その3』の感想はこちら。

『イリヤの空 UFOの夏 その4』の感想はこちら。

その他の秋山作品の感想はこちらから

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