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『龍盤七朝 DRAGONBUSTER 02』秋山瑞人最後の作品?

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四年かかってようやく第二巻が登場

2012年刊行作品。前作『龍盤七朝 DRAGONBUSTER 01』が2008年刊行だったので、なんと四年ぶりの新刊!わたしは、この時期、小説を全く読んでいなかったので、発売されていたことに全く気付いていなかった。よもや、続きを読むことができようとはビックリした記憶が残っている(その後10年放置されるのではあるが……)。

龍盤七朝 DRAGONBUSTER 〈02〉 (電撃文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

人間の才能について考えてみたい方。常に読み手の予想を裏切ってくるタイプの作品を読みたい方。熱いバトル系のライトノベル作品がお好きな方。続編が10年出ていなくても耐えられる方におススメ。

あらすじ

卯王朝第18皇女の月華(ベルカ)は偶然見かけた、涼孤(ジャンゴ)の剣舞の素晴らしさに憧れ、自らも剣の道を究めんと修練に励み始める。なんと、お嬢さま芸かと思われた月華の剣技は、驚異的な進度で上達し始める。一方、国を挙げての大武道大会「大比武」の開催が近付き、各地の腕利きたちが、武の頂きを目指し動き始めるのだが……。

ここからネタバレ

月華死ぬかと思った人!

はい!(←わたしだけ?)。秋山瑞人ならいかにもやりそうじゃん。

自らの裡に潜む、剣の才能に気付いた月華は欣喜雀躍。お嬢さま育ちの世間知らずもあって、手当たり次第に野試合を挑み、しかも連戦連勝してしまう。しかし勝ち続けた末に、挑んではならない強敵に出くわし、完膚なきまでの敗北を喫する。ヒロインに失禁させるライトノベル作家は秋山瑞人くらいではなかろうか?さんざん持ちあげて置いてからの、落差がホントにキツイ。まあ、死ななかっただけでもメッケものなのだろうけど。

月華の敗北が涼孤の覚醒に繋がると思った人!

はい!(←わたしだけ?)。覚醒とか必要なくて、既に十分すぎるくらい強かった。なんかビックリするくらい強くて、ドン引きだった。この主人公は、強さの次元がもはや違う領域なんだね。

月華の危機に駆けつけて、耐えに耐えたけど仕方なくというわけでも、怒りのあまり我を忘れてという態でもなく、あくまでも静かな諦観のうちに、必要最低限の仕事をしてのけた。

なんの手加減もない蔑視を生涯受け続けてきた涼孤の心の鎧は、あまりに堅固なものとなっている。生きていくために心の一部を摩耗させて続けてきただけに、涼孤の自己評価は著しく低い。こんな彼が「自分のために」剣を振るう日が来るのか?ここいら辺が、この物語の今後の注目ポイントと言えるかもしれない。

持てるものと持たざるもの

時として才能というものは、欲しくてたまらない者は得ることができず(蓮空)、才能が無くても生きていける者(月華)、才能があっても活かす場所の無い者(涼孤)に、もたらされてしまうことがある。

本巻の陰の主役は間違いなく蓮空である。蓮空は貧乏道場の師範代から、人生一発逆転を狙って、大比武への出場を決める。しかし、束の間の高揚感から覚めると、途端に命が惜しくなる。見苦しいまでの悪足掻きっぷりは、月華や涼孤とは対照的な存在としてこの物語の暗黒面を担っていくのではないだろうか(たぶん)。

ホントに二冊で終わると思ってた?

前巻のあとがきで、作者はこう書いていた。

次はいよいよバトルです。デストロイです。初めての勝利と初めての敗北、そろそろ本物の血が流れ始めます。一応、次の巻でラストまで行くつもり。

『龍盤七朝 DRAGONBUSTER 01』あとがきより

どう見ても、序盤も序盤。1巻まるごとプロローグだったじゃんという前巻なのだが、作者的には二冊で終わる腹積もりであったらしい。

翻って、本作のあとがきでの作者のお言葉はこうである。

というかあれだ、どうして俺はこの内容で「全二巻」とか言ってたんでしょうな。

『龍盤七朝 DRAGONBUSTER 02』あとがきより

作家というものは、時として物語の全体像を測り兼ねてしまうものらしい。このペースだとまだまだ、先は長そうに思えるのだけど、大丈夫なのだろうか?

『龍盤七朝 DRAGONBUSTER 02』の刊行から既に、10年が経過している。そろそろ続きが出ても良いのではないか秋山瑞人よ!(個人的には『E.G.コンバット』のファイナルを先に書いて欲しいけど)。

その他の秋山瑞人作品の感想はこちら

全作品の紹介記事作ってみたよ。

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