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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

2023年に読んで面白かった小説12選

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旬のタイミングを逃した感がスゴイけど、毎年書いているので今年も書く。おススメ小説の12選!「2023年に読んだ本」が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご注意を。読了直後のTwitterコメントと併せてどうぞ!

2023年に読んで面白かった小説12選

ちなみに、非小説部門のベスト記事はこちら。

そして、これまでの「面白かった小説約10選」系の記事はこちらから。

[少女庭国]/矢部嵩

〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA)

矢部嵩(やべたかし)を知ったのが、2023年最大の収穫だったかもしれない。超寡作作家で、既刊が四冊しかないのが切ない。

『[少女庭国]』はホラーとかエスエフだとか、百合的ななにかだとか、一般読者の安易な予想の遥か斜め上にものすごい剛速球が来た感があって、読み手としては唖然と見送るしかなかった。名状しがたい読書経験が味わえるので、奇書好きのあなたにおススメ。ただし強烈に人は選ぶ。

『[少女庭国]』の詳しい感想を読む

魔女の子供はやってこない/矢部嵩

魔女の子供はやってこない (角川ホラー文庫)

「〇〇年に読んで面白かった小説」シリーズは、基本的に一作家一作にしているのだけど、矢部嵩作品は例外にしちゃう。『魔女の子供はやってこない』は戦慄の暗黒系ガールミーツガールだ。こんなにどす黒い作品なのに、読後には一抹の抒情性が漂っちゃうあたり、ただごとではない作品だと思う。ただ、重ねて言っておくけど、強烈に人は選ぶ。

『魔女の子供はやってこない』の詳しい感想を読む。

成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈

成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ

2023年にブレイクした作家と言えば宮島未奈だろう。爽やかな青春小説であり、地元大津への愛に満ち満ちたご当地小説であり、コロナ禍の世相を描いた社会派小説でもある。奇しくも続篇の『成瀬は信じた道をいく』が本日発売となっている。早く読みたい!ちなみにタイトルは『成瀬は天下を取りにいく』であり「行く」ではないので注意が必要(新作も同様)。

『成瀬は天下を取りにいく』の詳しい感想を読む。

光のとこにいてね/一穂ミチ

光のとこにいてね (文春e-book)

少女時代から30歳直前まで。全く異なる性格、まるで違う境遇で生きてきたふたりの女がどうしようもなく惹かれあい。出会いと別れを繰り返しながら業を深めていくお話。タイトルがほんとうに秀逸で、読み進むにつれてその意味が「変奏」されていく構成がメッチャ巧い。終わり方も素晴らしい。その先をあれこれ妄想してしまう。

『光のとこにいてね』の詳しい感想を読む。

アリアドネの声/井上真偽

アリアドネの声 (幻冬舎単行本)

ガーン、Tweetしたときのタイトル間違ってる(ごめんなさい)。

ビックリ度としては2023年の読書体験で、いちばん驚かされたのはこの『アリアドネの声』だと思う。あと残り少ししかページ数がないけど、これでちゃんと解決できるの?説明できるの?読者を納得させるオチが提示できるの?と、読む側を不安にさせておいて、あまりに鮮やかな解決展開に愕然とさせられた。一瞬で「わからせる力」に脱帽なのであった。

『アリアドネの声』の詳しい感想を読む。

残月記/小田雅久仁

残月記

小田雅久仁(おだまさくに)も2023年に初読みだった作家。なんだか、日本ファンタジーノベル大賞っぽい作風だな?と思ってたら、やっぱり日本ファンタジーノベル大賞出身の方であった。三編の作品を集めた作品集。なんともいえない、余韻を残す印象的な物語ばかり。本作は、吉川英治文学新人賞と日本SF大賞を受賞。小田雅久仁のブレイク作品となった。

『残月記』の詳しい感想を読む。

爆弾/呉勝浩

爆弾

スズキタゴサクの得体の知れなさが最高。犯人VS刑事。取調室での息詰まる戦い。物語のかなりの部分を取調室のシーンに費やしていて、ただならぬ心理戦に読む側のテンションも上がっていく。サスペンスミステリとしては出色の完成度で、2023年版の「このミス」国内編では第一位に輝いている。映像化されそうな気がするので、今後に期待。

『爆弾』の詳しい感想を読む。

王朝奇談集/須永朝彦・編訳

王朝奇談集 (ちくま学芸文庫 ス-14-2)

王朝時代に書かれた説話集の中から、選り抜きのエピソード82本を須永朝彦(すながあさひこ)ならではのセンスで現代語訳した作品集。よくぞこれだけ変な話を拾い集めてきたものだと、筆者の取捨選択の妙に驚かされる。各作品は長くても10頁程度と、気軽に読めるので、スキマ時間読書にも最適。同様の趣旨でピックアップされた『江戸奇談怪談集』も出ているようなので、今年はこちらも読むつもり。

『王朝奇談集』の詳しい感想を読む。

ねじの回転/ヘンリー・ジェイムズ

ねじの回転 (光文社古典新訳文庫)

ここからは外国文学編。

『ねじの回転』はよく聞くお話ながら、いちども読んだことがなかったので、昨年ようやく手に取った次第。250頁程度と、外国文学としては短めのボリュームなので、手に取りやすい作品だと思う。英国の片田舎にある古いお屋敷。孤独なヒロイン。訳アリの美しい兄妹。ヘンリー・ジェイムズならではの、複数の解釈を許す曖昧な筆致が、読者の想像力を刺激する(もやもやする読後感ではあるのだけど)。

『ねじの回転』の詳しい感想を読む。

停電の夜に/ジュンパ・ラヒリ

停電の夜に (新潮文庫)

インド系アメリカ人、ジュンパ・ラヒリのデビュー作にして代表作。2000年のピューリッツァー・フィクション賞を受賞。インドとアメリカ。ふたつの国を出自とする移民二世でなければ持ちえない、独特の価値観が作品には強く滲み出ている。日本人の目線で読むと、未知の世界の情景や、人々の考え方の相違など、新鮮な気持ちで読むことができた。

『停電の夜に』の詳しい感想を読む。

ナイフ投げ師/スティーヴン・ミルハウザー

ナイフ投げ師

スティーヴン・ミルハウザー面白い!知らない街のデパートがあれこれ改装されていく話が延々と書かれていたりする。これ小説なの?なんだこれ?と読者を混乱にたたき込む、めくるめく「架空史」の世界。それでいて「月の光」みたいな、エモーショナルで美しい話もあったりして、底知れぬ作風の奥深さを感じる。今年も継続して読む。

『ナイフ投げ師』の詳しい感想を読む。

ハイファに戻って/太陽の男たち/カナファーニー

ハイファに戻って/太陽の男たち (河出文庫)

パレスチナを代表する作家のひとりガッサーン・カナファーニーの作品集。イスラエルの独立によってどれだけのパレスチナ人が故郷を追われ難民となったのか。そして各地で弾圧され、虐殺されてきたのか。いかに、わたしたちがパレスチナ問題に無知であったかを気付かせてくれる。永らく絶版状態だったが、昨今の世界情勢を踏まえ、再版されているのでこの機会に是非。

『ハイファに戻って/太陽の男たち』の詳しい感想を読む。

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