「人間」シリーズ、人識編は四冊同時刊行
2010年刊行作品。西尾維新の「人間」シリーズもようやく最後の人識(ひとしき)編なのだが、まさかの四冊同時刊行である!刊行タイトルは以下の通り。
- 匂宮出夢との関係
- 無桐伊織との関係
- 零崎双識との関係
- 戯言遣いとの関係
零崎人識の「人間関係」は複雑なようで、四人分それぞれの「関係」が別々の作品として登場するのである。
今回のお相手役は匂宮雑技団の次期エース匂宮出夢(におうのみやいずむ)。本作は『ネコソギラジカル』刊行後に出ているため、その後の運命が判っているだけにいろいろ複雑な一作である。
講談社(西尾維新)文庫版は2014年に刊行されている。「人間」シリーズのノベルス版には、カードゲーム風のおまけが特典として付いてきていたのだが、文庫版ではその企画はさすがになくなっている。
しかし文庫版の竹のイラスト、タッチが変りすぎて出夢はまだしも、人識がもはや別人である。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
戯言シリーズの中では匂宮出夢のファン!匂宮出夢メインの話を読みたいと思っていた方。零崎一賊の中ではやっぱり人識でしょうと思っている方。子荻ちゃんと西条玉藻が大好きな方におススメ。
あらすじ
汀目俊希こと、零崎人識は殺人鬼の本性を隠しつつも、平凡な中学生としての生活を続けていた。そこに突如として現れた匂宮出夢は、人識にある依頼を持ちかける。それは日本屈指の財閥玖渚家の直属血縁者の暗殺であった。立ちはだかるのは直木三銃士の面々。何故か、西条玉藻を仲間に加えた二人は、暗殺現場へと向かうのだが……。
ここからネタバレ
子荻ちゃんが今回も登場
西尾維新、このシリーズで、絶対に萩原子荻が大好きなのだと思う。いくらなんでも出番が多過ぎる!西条玉藻が無理やり今回のパーティに加わるのも、子荻ちゃんを出すためとしか思えない。本編での扱い、失敗したと思っているのではないだろうか?
とか言いながらも、西条玉藻(ゆらぁりぃ)はキャラが濃いので個人的には大好きなのだけど。子荻ちゃん、姫ちゃん、西条玉藻がガチで活躍する話をもっと読みたかった。
殺人鬼と殺し屋の恋
さて、本題。今回は、あり得たかもしれない恋が終わる話である。読後の寂莫感はシリーズ中、随一とも言える作品である。
殺人鬼の一賊、零崎一識と、殺し屋家業を生業とする匂宮出夢。「人間」シリーズでは何度か顔を合わせてきた二人だが、今回はこの二人を中心に物語が展開していく。
その人生において、殺戮に塗れてきた一識と出夢。しかし、人を殺さずにはいられない、性(サガ)として人を殺す一識と、職業として人を殺してきた出夢は、全く異なる属性の人間である。その交流の中で、僅かに判りあえるのでは、一緒に生きていけるのでは、そんな仄かな想いも芽生え始めてきた二人だったが、今回でその関係が完全に、完膚なきまでに破壊される。
予想された結末ではある
人類最悪の遊び人西東天(さいとうたかし)によるちょっかいがあったにせよ、出夢本人が、他者との交流を深めることで「人間強度が下がる」のではと疑念を抱き始めた時点で、遅かれ早かれ二人の関係は破たんしていたのではないかと思われる。
人識をして、「共犯者であり家族のようなもの」とまで言わせていた、二人の人間関係は「敵対関係」として終わる。この後の出夢の運命を考えるとなんとも切ない話だ。これ読んでから『ネコソギラジカル』を読み返すとかなりシンミリできることは請け合いである。
戯言シリーズ関連作品の感想はこちらから
〇戯言シリーズ
クビキリサイクル / クビシメロマンチスト / クビツリハイスクール / サイコロジカル(上・下) / ヒトクイマジカル / ネコソギラジカル(上) / ネコソギラジカル(中) / ネコソギラジカル(下) / ザレゴトディクショナル
〇人間シリーズ
零崎双識の人間試験 / 零崎軋識の人間ノック / 零崎曲識の人間人間 / 零崎人識の人間関係(匂宮出夢との関係 / 無桐伊織との関係 / 零崎双識との関係 / 戯言遣いとの関係)
〇最強シリーズ
人類最強の初恋 / 人類最強の純愛 / 人類最強のときめき