ネコショカ

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『零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係』西尾維新 「人間」シリーズ伊織編


「人間」シリーズ伊織ちゃん編

2010年刊行作品。西尾維新の「人間」シリーズ、最後の人識編は四冊同時刊行!ということでそのうちの二冊目が、今回ご紹介する「無桐伊織との関係」である。

無桐伊織(むとういおり)は『零崎双識の人間試験』で登場した、もっとも新しい零崎一賊である。一賊を家族とみなす零崎にあって、伊織は人識にとっての妹的な立ち位置のキャラクターになる。

零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社ノベルス)

講談社(西尾維新)文庫版は2014年に登場している。ノベルス版でついていた、カードゲーム風のおまけは、こちらには付いてこない。

零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社文庫)

零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社文庫)

 

あらすじ

石凪萌太との約束を果たすべく、人類最強哀川潤は大厄島へ向かう。事態に巻き込まれた零崎人識、伊織の兄妹、闇口崩子と共に島に降り立った人類最強だったが、そこでは生涯無敗を誇る六何我樹丸が待ち受けていた。二人の対決は、"大厄ゲーム"での集団戦へと持ち越されるのだが、最強VS不敗の対決の行く末は?

 

二組の兄と妹

本作はこれまで以上に戯言シリーズ本編の外伝としての要素が強い一作である。

この物語では二組の兄妹が登場する。

一組目は零崎人識と無桐伊織の兄妹である。

伊織の場合は実兄である無桐剣午(けんご)や、零崎としての長兄である双識(そうしき)との関係性もあってややこしい。伊織の物語は先行する『零崎双識の人間試験』で既に語られている。そこで彼女は自己の運命を受け入れ、殺人鬼としての生を生きることを覚悟している。

そしてもう一組は石凪萌太と闇口崩子である。

姓は違うが二人は六何我樹丸(りっかがじゅまる)を父とする腹違いの兄妹である。一族を裏切り島から逃亡した後、崩子は萌太の庇護下にあり、積極的に己の人生を生きようとしてこなかった。いーちゃんという新たな庇護者が登場したこともあり、伊織に比べると覚悟が完了していない状態である。

覚悟が完了している伊織と、それが出来てない崩子。二人の「妹」の対比の妙が面白い。本作のタイトルは「零崎伊織との関係」ではある。しかし崩子の里帰りエピソードにかなりの分量を費やしてしまった結果として、肝心の人識の存在感が少々薄くなってしまったのは、やや難点かな。

哀川さんが全部持っていく

哀川さんが出てくると話が締まるのはいいのだが、圧倒的な主人公オーラでなにもかも持っていってしまうのが難点。この人あまりにも目立ち過ぎる。いちおうこのシリーズは人識が主役なのだけど……。

本作は作中の時系列で言うと、哀川さんと想影真心(おもかげまごころ)との対決直後っぽいので『ネコソギラジカル(中)』の後あたりかな。さしもの人類最強も、真心戦でのダメージが癒えておらず2割のパワーしか出せない状況。そんな状況でも臆せず、生涯不敗に正面突撃していくあたり、いつも通りのテンションで読んでいて安心させられる。

疎遠になってしまった崩子と、我樹丸の親子関係に対して、とりあえず両者をぶつけてみればいいんじゃない?っていうのは、いかにも哀川さんらしい無茶な解決方法である。

人識は「零崎」じゃないの?

人識は殺人鬼の一賊である零崎姓を名乗りながらも、殺人衝動に支配されない。その理由について、本作では人識はそもそも零崎ではないのでは?といった疑惑が提示されている。本質的には零崎でない人間が、無理に無理を重ねてきた報いとして、人識の寿命がもう長くないことも示される。ここいらへんは、この先が気になるところ。

意外な点としては、問識(といしき)が登場したことで、絶滅していくかに思えた零崎一賊に、復活の目が出てきたこと。まあ、血でも技でもなく、殺人衝動があれば零崎になれるので、他の連中に比べるとむしろ根絶やしにしにくい一賊だよね、零崎は。

 

零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社ノベルス)