今週のお題「おうち時間2021」に便乗します!
この書評ブログを始めて四年が経過。レビューを書いた作品の数も650冊を超えました。まとめ系の記事はあえて書くのを避けてきましたが、これだけ読めばそろそろ書いてもいいのでは?ということで、ここ数年で読んだ作品の「おススメ感動小説、厳選15作品」をご紹介できればと思います。
全て自分で読んだうえで、2000文字以上のレビューを書いた作品のみをチョイスしています。詳しい感想へのリンク(後半はネタバレがあります、注意!)も貼っておきますので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
コロナ禍で外出もままならない毎日ですが、読書で自宅で過ごす時間を豊かなものにしてみませんか?
- 『どこよりも遠い場所にいる君へ』阿部暁子
- 『パラ・スター Side 百花/Side 宝良』阿部暁子
- 『どうかこの声が、あなたに届きますように』浅葉なつ
- 『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和
- 『ちょっと今から仕事やめてくる』北川恵海
- 『九度目の十八歳を迎えた君と』浅倉秋成
- 『向日葵を手折る』彩坂美月
- 『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』葵遼太
- 『君の膵臓をたべたい』住野よる
- 『また、同じ夢を見ていた』住野よる
- 『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』乙野四方字
- 『盤上に君はもういない』綾崎隼
- 『天盆(てんぼん)』王城夕紀
- 『ピエタ』大島真寿美
- 『童話物語』向山貴彦
- おわりに
『どこよりも遠い場所にいる君へ』阿部暁子
あらすじ
月ヶ瀬和希は、俗世間とのかかわりのない生活を求めて、 離島の高校へと進学を決めた。かつての夢を諦め、 他者との交わりを極力避けて生活していた和希の前に、 謎の少女、秋鹿七緒が現れる。神隠し、 マレビトの伝説が残る島の入り江に忽然と現れた彼女は1974年 から来たのだと告げるのだが……。
ここがおススメ!
過去に辛い経験をして、逃れるように離島の高校にやってきた主人公が、「過去からやってきた」少女に出会います。彼女は何者なのか。二人はどうなるのか。心を閉ざし、傷ついた主人公をやさしく見守る島の人々。大人たちのさりげない気配りが心にしみてきます。人間のやさしさについて知ることが出来る良作です。姉妹作の『どこよりも遠い場所にいる君へ』もおススメです。
『パラ・スター Side 百花/Side 宝良』阿部暁子
あらすじ
最高の競技用車いすを作りたい。車いすテニスの世界へ挑む親友、君島宝良のため、山路百花は車いすメーカー藤沢製作所に入社する。競技用車いすの製造部門に配属された百花だったが、理想と現実のギャップに苦しむことになる。
車いすテニスプレーヤー、君島宝良は空前のスランプに悩んでいた。悩んだ末にプレイ環境を変えること選んだ宝良だったが、それは新たな試練の始まりでもあった。世界屈指の競合が集うジャパンオープン。再起をかけて宝良の挑戦が始まる。
ここがおススメ!
一作家、一作品にしようかと思っていたのですが、阿部暁子作品はもっと世の中に広まって欲しいので二作紹介させていただきます。
車いすテニスの世界を舞台とした物語です。競技用車いすを作る側と、車いすテニスプレイヤー二人の主人公の姿を描きます。健常者と障害者の意識の違い。大切な人のために、人間は何が出来るのかを教えてくれる一作です。
『パラ・スター』は『本の雑誌』が選ぶ2020年度文庫ベストテンの第一位に選ばれています。阿部暁子作品良作揃い。そろそろブレイクすると思いますよ。
『どうかこの声が、あなたに届きますように』浅葉なつ
あらすじ
かつて地下アイドルとして活躍していた小松奈々子は、とある事件から引退を余儀なくされる。心を病み、常にマスクで顔を覆い、引き籠る日々。そんなある日、奈々子はラジオ番組のアシスタントとしてスカウトされる。顔の見えない声だけの世界。ラジオパーソナリティ「小松夏海」として、奈々子は人生の再スタートを切るのだが……。
ここがおススメ!
元地下アイドルの女性が主人公の成長物語です。独特なラジオパーソナリティの世界を描きます。右も左もわからない状態で始めたラジオの仕事が、いつしか、自分だけではなく多くの人々の心の支えになっていく展開は読者の心を打ちます。
『どうかこの声が、あなたに届きますように』は第一回「読者による文学賞」を受賞しています。多くの読者に支持された人気の高い作品です。
『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和
あらすじ
喫茶店フニクリフニクラでは、「とある条件」を満たすと、ただ一度だけ願った時間に戻ることが出来る。言えなかった思い、伝えられなかった気持ち、今はもういないあの人に会いたい、さまざまな人々の願い。噂を聞き付けて今日もまた一人、新たな客がやってくる。
ここがおススメ!
たった一度だけタイムスリップが出来るなら、あなたは誰に会いに行きますか?後悔を残して別れてしまった、大切な人との再会と別れを描いた連作短編集です。再会できるのは「コーヒーが冷めない」までの、本当に僅かな時間だけです。短い時間に何を伝えるのか。かけがえのない時間の大切さを知ることが出来る作品です。
有村架純主演で映画化もされており、映画版もおススメです。
『ちょっと今から仕事やめてくる』北川恵海
あらすじ
毎日繰り返されるパワハラ。劣悪な職場環境。疲弊し絶望した青山隆は、吸い込まれるように駅のホームに身を投げ出そうとする。しかし、ギリギリのところで「ヤマモト」と名乗る男に命を救われる。小学校の同級生だと男は言うが、隆には身に覚えがない。誘われるままに「ヤマモト」と飲みに行った隆だったが、それは人生の大切な分岐点だった。
ここがおススメ!
ブラック企業に入社してしまい、日々のパワハラで疲弊している若手社会人が主人公です。自殺すら考えていた主人公の前に、突然謎の男が現れます。考え方次第で人生は変わる。勇気をもって「変えてみる」ことで人生はもっと良くなる。ちょっと仕事に疲れたなと思った方に読んでいただきたい作品です。
『九度目の十八歳を迎えた君と』浅倉秋成
あらすじ
会社員の間瀬豊は、ある朝、駅のホームで高校時代のクラスメート二和美咲を見かける。しかし彼女は高校生の制服を着たまま。18歳のあの時の姿で再び間瀬の前に現れる。彼女はどうして歳を取らないのか。何故、何度も高校生を繰り返すことが出来るのか。かつての同級生や学校関係者たちを訪ね歩く中で、間瀬は秘められた真相を知ることになる。
ここがおススメ!
『九度目の十八歳を迎えた君と』このタイトルは気になりますよね。何度も高校三年生を繰り返すヒロインと、かつて彼女の同級生であった主人公。高校時代のトラウマと向き合う中で、痛みを乗り越え前に進んでいこうとする主人公たちの姿が感動的です。大人になってから読むと、より泣ける作品です。
『向日葵を手折る』彩坂美月
あらすじ
突然の父の他界により、小学六年生の高橋みのりは、母の実家である山形県桜沢市に移り住むことになる。豊かな自然と、濃密な人間関係に戸惑ったみのりだったが、いつしかその環境に溶け込んでいく。粗暴な西野隼人と、温厚な藤崎怜。対照的な二人の少年との出会い。集落で噂される、子どもを殺す「向日葵男」の存在。そして遂に不穏な事件が発生するのだが……。
ここがおススメ!
都会から、地方の村に移り住んだ少女の成長物語です。謎めいた「向日葵男」を巡るミステリ的な展開と、ヒロインの少女をめぐる三角関係。美しい自然描写。幼い日の淡い恋愛模様と、残酷な運命。それでも力強く生きていこうとするヒロインの姿が、爽やかな感動を読み手にもたらしてくれます。
『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』葵遼太
あらすじ
二度目の高校三年生の春。大きな絶望と喪失感の中に居た佐藤晃だったが、不思議と彼の周囲には特異な人物が集まる。変わり者ギャルの白波瀬巳緒、吃音のためコミュニケーションにコンプレックスを抱える御堂楓、オタク男子の和久井順平。クラスのアウトサイダーたちとの日常は、晃の心に新たな風を呼び込んでいく。
ここがおススメ!
こちらもタイトルが気になる作品ですね。その意味は、是非本編を読んで確かめてみてください。
一人の少年の喪失と再生の一年間を描きます。仲間たちとの交流。そして音楽が、傷ついた主人公の心を癒してくれます。そしてヒロインの圧倒的な存在感に、涙腺が決壊すること間違いなし。号泣度では今回紹介した中でもダントツの作品です。
『君の膵臓をたべたい』住野よる
あらすじ
高校生の僕が病院で拾った「共病文庫」と名付けられた日記帳。それはクラスメイト山内桜良が、余命僅かと知らされてからの日常を綴ったものだった。秘密を知ってしまったことで始まる二人の関係。友達を作らない孤独を愛する僕と、社交的で誰からも好かれる桜良。全く違うお互いのキャラクターに、いつしか二人は惹かれあっていく。
ここがおススメ!
喪失と再生というテーマであれば、この作品を挙げないわけにはいきません。人気作家住野よるのデビュー作にして、最大のヒット作。今回ご紹介する中で、知名度的にはこの作品がナンバーワンかもしれないですね。映画化、アニメ化もされた、累計300万部超の大ベストセラーです。
地味で孤独を愛する主人公と、陽気で誰からも愛されるヒロイン。まったく異なる個性を持つからこそ惹かれ合う。そんな二人の姿が瑞々しいタッチで描かれます。終盤の意外な展開に驚いた読者は多いのではないでしょうか。
『また、同じ夢を見ていた』住野よる
あらすじ
小学生四年生の小柳奈ノ花には同級生の友だちがいない。しかし彼女には、一匹の猫と、素敵な女性”アバズレさん”、そしてやさしい”おばあちゃん”との交流があった。そんなある日、奈ノ花は初めて訪れた場所で”南さん”という不思議な女子高生に出会う。人生と幸せの意味。さまざまな事件を通して、成長を遂げていく奈ノ花の姿を綴る。
ここがおススメ!
住野よる作品も一作に絞れなかったのでこの作品も推しちゃいます。小学生の少女を主人公として、「人生」とは何か?そして「幸せ」の意味について考えていきます。作中に散りばめられた謎が、最後に繋がった時に大きな感動がもたらされます。ゆっくりと時間をかけて丁寧に読み込んでいきたい一作です。
『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』乙野四方字
あらすじ
並行世界の存在が立証された世界。隣接した並行世界への移動は日常的に発生する。両親が離婚し、母親の元に引き取られた高崎暦は進学先の高校で、瀧川和音という少女に出会う。
並行世界の存在が立証された世界。隣接した並行世界への移動は日常的に発生する。両親が離婚し、父親の元へ引き取られた高崎暦は、父の勤務先の研究所でひとりの少女、佐藤栞に出会う。
ここがおススメ!
こちらは二冊で一作とも言えるエスエフ作品です。ちょっとだけ違う並行世界が、無数に存在する設定となっています。並行世界では愛する人と自分の関係はどうなるのか?二つの物語はどちらを先に読んでもオッケーですが、両方読んで初めて、一つ大きな物語が浮かび上がる仕組みになっています。
2022年の映画化が決定しており、今後の展開が楽しみな作品です。
『盤上に君はもういない』綾崎隼
あらすじ
長い歴史の中で、未だに女性のプロ棋士は居ない。プロ昇格最後の関門、魔境と呼ばれる奨励会三段リーグで戦う二人の女性。永世飛王を祖父に持つ、将棋の家に生まれた若き天才、諏訪飛鳥。病弱で不戦敗を重ね、年齢制限ぎりぎりの瀬戸際に立つ千桜夕妃。残された席はただ一つ。それぞれの想いを秘めて、二人は昇格を賭けた最後の戦いに臨むのだが……。
『盤上に君はもういない』綾崎隼 ただひたすらに「愛の物語」だった!より
ここがおススメ!
圧倒的な男社会である、将棋の世界で、それでも強くありたいと願う女性たちの姿が描かれます。将棋に賭ける思いの強さ。将棋を通してしか、触れ合うことが出来ない人間の不器用さ。「棋士」の座をかけて勝負に挑む主人公の、途方もない熱量に圧倒される作品です。表紙イラストの意味も分かると泣けます。
『天盆(てんぼん)』王城夕紀
あらすじ
蓋の国では、盤戯「天盆」の優劣で立身出世が決まる。貧困家庭に生まれながら、幼いころから「天盆」に魅せられた凡天は、次々と強敵を倒し勝ち上がっていく。しかし過去三十年、平民からの征陣者は出ていない。非情で不条理な世界の中で、凡天とその家族たちは、ただ一つの頂きを目指して戦っていくのだが……。
ここがおススメ!
将棋つながりでもう一作。「天盆」と呼ばれる将棋風の盤戯に命を懸けた人々の群像劇です。こちらは架空の中国風王朝を舞台とした作品です。この世界では「天盆」が強ければ出世が出来ます。天賦の才能を持った少年が、数多の「天盆」打ちと対戦していくことで成長していきます。家族の絆を描いた物語としても秀逸。人生について悩んだ時に読んで頂きたい作品です。
『ピエタ』大島真寿美
あらすじ
18世紀ヴェネツィア。親に捨てられた孤児たちを養育するピエタ慈善院。そこでは優れた音楽能力を持つ女性たちが「合奏・合唱の娘たち」と呼ばれ、欧州一円に名声を響かせていた。現在は演奏の現場から離れ、事務方として働くエミーリアは、かつての師ヴィヴァルディの訃報を聞く。恩師の足跡を追っていく中で、エミーリアは自身の青春の日々を追想していく。
ここがおススメ!
18世紀のイタリア、ヴェネツィアを舞台とした物語です。高名な音楽家、ヴィヴァルディに音楽を学んだ女性たち。それぞれの人生が描かれていきます。もう戻らない若き日々。喪ったもの。得られなかったもの。それでも人生は終わらない。中年期を過ぎて読むと、より一層しみじみと感動できる作品だと思います。
『童話物語』向山貴彦
あらすじ
世界は、そして人類は滅ぶべき宿命なのか。九日間人間を観察してその答えを出すことを命じられた妖精フィツは一人の少女に出会う。しかしフィツの出会ったペチカはあまりに悲惨な境遇のために心がねじけてしまった少女だった。両親はなく友もなく、周囲から虐待を受けるペチカは世界の破滅を望む。
ここがおススメ!
最後におススメするのは向山貴彦の『童話物語』です。少し前の作品ですが、「感動」というテーマではこの作品は外せません。
ファンタジー世界を舞台とした物語です。ヒロインの少女がものすごくひねくれたキャラクターなので、最初は感情移入が難しいのですが、彼女はさまざまな体験をし、成長していきます。彼女の辛く苦しかった人生は、物語の終盤に大きな意味を持ってきます。ファンタジーに抵抗のない方であれば、是非手に取っていただきたい作品です。
おわりに
このブログで紹介して来た650冊以上の作品の中から、「おススメ感動小説」というテーマで、おススメの15作をピックアップしてみました。
本には読むべきタイミングがあります。とあるタイミングで読んだら全く感動しなかったのに、別のタイミングで読んだらボロボロに泣けた。また、その逆もあると思います。心理状態や、人生経験、ちょっとしたテンションの違いで本の感想は全く別のものになります。読み手それぞれに、「感動小説」があってよいのだと思います。
今後も、良い作品があればどんどん追加していきたいと思います。皆さんのおススメがあれば、教えていただけると嬉しいです!