ネコショカ

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『黒祠の島』小野不由美 閉ざされた島で起きる猟奇殺人


明治の寺社統制に背いた島の物語

2001年刊行作品。まずは祥伝社のノン・ノベルから新書版で登場。

黒祠の島 (ノン・ノベル)
 

2004年に祥伝社文庫版が登場した。

黒祠の島 (祥伝社文庫)

黒祠の島 (祥伝社文庫)

 

続いて2007年に新潮文庫版がリリースされている。現在入手しやすいのはこちらの版であろう。

黒祠の島 (新潮文庫)

小野不由美作品としては「十二国記」シリーズが特に名高いが、もう一つの系譜として「悪霊」シリーズに始まる一連のホラー作品群が存在する。民俗学的な要素や、土着の歴史、文化を取り込んだ小野不由美の怪奇小説は、独特の雰囲気や怖さがあり、こちらも非常に魅力的なのである。

あらすじ

その島の名は夜叉島。現在では平凡な名前にその名は変えられてしまったが今でも土地の古老はそう呼ぶ。島中を風車と風鈴が覆い尽くすこの小さな島で、作家の葛木志保が失踪した。彼女の足跡を辿って島を訪れた式部剛だったが閉鎖的な島民たちは言を左右して容易に真実を語ろうとしない。やがて式部は猟奇的な殺人事件がこの島で起きていたことを突き止めるのだが……

「黒祠」って何?

黒祠とは明治初期の神社統制に従わず、民間の信仰として残った社のこと。明治期には民間信仰に基づいた多くの小祠が国家政策の名の下に統廃合されていったらしいので、確かにこんな神社があってもおかしくない。ましてや離島ならなおさらのこと。神社フリークであるわたしとしては期待は大いに高まる。

『屍鬼』好きにはおすすめ、あともう少し

ノン・ノベル版の帯には1949年『獄門島』1987年『十角館の殺人』そして…、なんて惹句が書いてあるのだけれど、十角館はともかくとして(旦那の本だけど)、雰囲気は確かに獄門島に近い。本作もまた閉鎖社会の因習や土俗的な信仰から生まれた物語なのだ。

小野作品の例に漏れずかなりの長編なのだけれども、飽きずに最後まで読ませる力がある。特にストーリーが二転三転する後半は読み応えあり。ラストの暗転は相変わらずお見事で全く予想外。浅緋の登場には本当にゾクゾクするような戦慄を味合わせてもらった。

主人公が微妙……

が、惜しむらくは主人公が弱い。異常に神社に詳しいのは作劇上のご愛敬としても、なぜ仕事上の友人でしか無い人間の事件にここまで首を突っ込むのか、事件を追い続けるだけの明確な動機が描かれないので、逆に何かあるんじゃないかと勘ぐってしまいました。主人公の内面をもっと抉って欲しかった。

『屍鬼』までとは言わないが、もっと長い話になってもいいから徹底して書き込んで欲しかったかな。主軸としたかったであろう「罪と罰」の構図がどうも鮮明に浮かび上がってこなかったのも惜しい。

最後に出版社の人にお願い。登場人物一覧(系図付きで!)を載せて欲しい。『屍鬼』程じゃないけれど本作も登場人物が多く、しかも血縁関係ぐちゃぐちゃ。何度もこの人誰だっけと悩んでしまったよ。

黒祠の島 (新潮文庫)

黒祠の島 (新潮文庫)

 

マンガ版も出ている

2005年には山本小鉄子によってコミカライズ版が刊行されている。幻冬舎バーズコミックスからの刊行。書き下ろしで全三巻。

黒祠の島 (1) (バーズコミックススペシャル)

黒祠の島 (1) (バーズコミックススペシャル)

  • 発売日: 2005/11/24
  • メディア: コミック
 
黒祠の島 (2) (バーズコミックススペシャル)

黒祠の島 (2) (バーズコミックススペシャル)

  • 発売日: 2005/12/24
  • メディア: コミック
 
黒祠の島 3 (バーズコミックススペシャル)

黒祠の島 3 (バーズコミックススペシャル)

 

2009年には幻冬舎コミック漫画文庫版も登場している。こちらは上下巻構成。

黒祠の島 上 (幻冬舎コミックス漫画文庫 や 1-1)

黒祠の島 上 (幻冬舎コミックス漫画文庫 や 1-1)

 
黒祠の島 下 (幻冬舎コミックス漫画文庫 や 1-2)

黒祠の島 下 (幻冬舎コミックス漫画文庫 や 1-2)

 

小野不由美「十二国記」シリーズの感想はこちらから