ネコショカ

小説以外の書籍感想はこちら!
『刀伊の入寇 平安時代、最大の対外危機』
女真族の襲来と軍事貴族たちの台頭

2021-01-01から1年間の記事一覧

『九十九十九(ツクモジュウク)』舞城王太郎によるJDCトリビュート作品

清涼院流水のJDCシリーズの一環として書かれた作品 『九十九十九(つくもじゅうく)』2003年刊行作品。『煙か土か食い物』『暗闇の中で子供』『世界は密室でできている。』『阿修羅ガール』に続く、舞城王太郎の第五作にあたる。 九十九十九 (講談社ノベルス…

『死の記憶』トマス・H・クック 平穏なままに年齢を重ねていくことへの怖れ

過去から蘇る「死の記憶」 1999年刊行作品。オリジナルの米国版は1993年に刊行されている。ちなみに、原題はまさにそのまんまな『Mortal Momory』である。 書影の帯を見て頂くとわかると思うが、『緋色の記憶』のトマス・H・クックとある。つまり日本国内では…

『さよならも言えないうちに』川口俊和 「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの四作目!

シリーズ、三年ぶりの新作 2021年刊行作品。『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』に続くシリーズ四作目。三年ぶりの新作である。川口俊和(かわぐちとしかず)の小説作品としては本作が四冊目。この人、このシ…

『鉄(くろがね)コミュニケイション』秋山瑞人の第二作はノベライズの域を超えた傑作!

電撃G's文庫から電撃文庫に移籍した作品 1998年刊行。『鉄(くろがね)コミュニケイション』は秋山瑞人(あきやまみずひと)の第二作品である。 最初は電撃文庫で、美少女系のノベライズ等を専門に出していた電撃G's文庫から世に出ている。それがこちら。1巻…

『夜の記憶』トマス・H・クック 幼き日の心の闇に向き合うこと

過去と現実、虚構と真実が混ざり合う幼い日の物語 本日ご紹介するのはトマス・H・クックのこちらの作品。クック作品を紹介するのは前回の『緋色の記憶』に続いて二回目となる。 2000年刊行。オリジナルの米国版は1998年刊行。「このミステリがすごい!2000」の…

『クリスタルサイレンス』藤崎慎吾 ベストSF1999国内部門第1位作品

SF

藤崎慎吾のデビュー作品 1999年作品。単行本版は朝日ソノラマから刊行。早川書房のベストSF1999(「SFが読みたい2000」)では『グッドラック 戦闘妖精・雪風』を抑えて国内部門第1位に輝いている。 作者の藤崎慎吾(ふじさきしんご)は1962年生まれの小説家…

『薔薇のなかの蛇』恩田陸 理瀬シリーズ17年ぶりの最新作はイギリスが舞台!

「理瀬」シリーズの実質的な三作目! 2021年刊行作品。『麦の海に沈む果実』『黄昏の百合の骨』に続く、「理瀬シリーズ」の実質的な第三作目にあたる。前作の『黄昏の百合の骨』が登場したのが2004年だったので、なんと17年ぶりのシリーズ最新作ということに…

『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』西尾維新 南空ナオミとL(エル)メインのノベライズ

本日は西尾維新が手掛けた、数少ないノベライズ作品として『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』をご紹介したい。 西尾維新による『DEATH NOTE』ノベライズ 本作は2006年刊行。言わずとしれたベストセラーコミック『DEATH NOTE(デスノ…

『失はれる物語』乙一 初期乙一のベストアルバム的な作品集

白乙一の初期代表作を収録 2003年刊行作品。既刊であった『きみにしか聞こえない』『さみしさの周波数』『失踪HOLIDAY』の中から五作品を抜粋、更に書き下ろしを一編(「マリアの指」)を加えて、単行本化したのが本書。 各編の初出は以下の通り。 『きみに…

『悪夢制御装置』はライトノベル×ホラーの越境アンソロジー

スニーカー・ミステリ倶楽部のアンソロジーシリーズ第五弾 2002年刊行。短命に終わったスニーカー・ミステリ倶楽部だが、ライトノベルユーザに向けのミステリ啓蒙本として、一般作家によるアンソロジー(短編集)を数冊刊行していた。 ラインナップは以下の通…

『沈黙』古川日出男 神秘の旋律ルコの魅力

古川日出男の三作目 1999年刊行作品。『ウィザードリィ外伝II 砂の王(1)』『13』に続く、古川日出男(ふるかわひでお)の第三作。『ウィザードリィ外伝II 砂の王(1)』は著作にカウントされないこともあるので、そう考えると第二作ということになる。いず…

『アクアリウムの夜』稲生平太郎 地方都市の春夏秋冬を抒情豊かに描いた幻想小説

今週のお題「読書の秋」本日はこちら。 稲生平太郎名義の初小説作品 もともとは1990年に書肆風の薔薇のロサ・ミスティカ叢書から出ていた作品。 アクアリウムの夜 (ロサ・ミスティカ叢書) 作者:稲生 平太郎 書肆風の薔薇 Amazon その後、2002年にスニーカー文…

『吹け、南の風』秋山完 圧倒的な敵勢力VS不正規部隊の戦いを描く良作

秋山完の大長編作品 今週のお題「読書の秋」に引き続き便乗。本日は秋山完(あきやまかん)の大長編作品『吹け、南の風』全三巻を一気にご紹介したい。 『吹け、南の風』は2001年~2003年にかけて、今は亡きソノラマ文庫から刊行されたエスエフシリーズ。秋…

『殺人鬼の放課後』はスニーカー・ミステリ倶楽部発のミステリアンソロジー

今週のお題「読書の秋」にエントリします! 短命に終わったスニーカー・ミステリ倶楽部 2001年に登場した、角川スニーカー文庫内のミステリレーベルが、スニーカー・ミステリ倶楽部だ。でも、結局あまりうまくいかなくて、数年で消えてしまったはず。同時期に…

『兇人邸の殺人』今村昌弘 『屍人荘の殺人』シリーズの第三弾が登場!

今週のお題「読書の秋」に便乗しちゃう。 シリーズ累計で100万部の人気シリーズ 2021年刊行作品。『兇人邸(きょうじんてい)の殺人』は『屍人荘(しじんそうのさつじん)の殺人』『魔眼の匣(まがんのはこ)の殺人』に続くシリーズ第三弾である。今村昌弘(…

『<柊の僧兵>記』菅浩江のデビュー二作目

ソノラマ文庫版とデュアル文庫版がある 1990年刊行作品。最初はソノラマ文庫からの登場。この時の表紙イラストは加藤洋之(かとうひろゆき)&後藤啓介(ごとうけいすけ)。『ゆらぎの森のシエラ』に続く、菅浩江(すがひろえ)の第二作である。ちなみに『<…

『牛丼屋夜間アルバイト』小野省子 言葉にならないなにかを言葉にして届けてくれる一冊

タイトルで即買いだった 2001年刊行作品。作者の小野省子(おのしょうこ)は1976年生。第一回野口雨情大賞の優秀賞を受賞。キャスターポエムコンテスト99グランプリを表題作で受賞。茨城県県出身で、現在はさいたま市在住の方。 ご本人のHPはこちら。 おスス…

『義元謀殺』鈴木英治のデビュー作は希少な今川視点の戦国モノ

角川春樹小説賞の特別賞受賞作品 第一回角川春樹小説賞の特別賞受賞作品。2000年刊行作品。 著者の鈴木英治(すずきえいじ)は1960年生まれ。早々と二回目で休止状態になってしまっている角川春樹小説賞出身というのは、作家業の振り出しとしてはどうなんだ…

『汝ふたたび故郷へ帰れず』は飯嶋和一の希少な現代モノ作品集

飯嶋和一の貴重な現代小説集 1989年刊行作品。河出書房新社主催の第25回文藝賞受賞作である表題作に加え、講談社主催の第40回小説現代新人賞を受賞した『プロミスト・ランド』他、1編を収録した作品集。 極めて寡作でありながら骨太に男の生き様を描き、豊穣…

『導きの星』小川一水 異種文明を見守る公務員が主人公、全四巻を一気に紹介

小川一水作品はここからガチ 2002年刊行作品。ハルキ文庫のヌーヴェルSFシリーズからの登場。全四巻の『導きの星』シリーズを、「1目覚めの大地」「2争いの地平」「3災いの空」「4出会いの銀河」と、順に紹介していきたい。 本作刊行に至るまで、ライトノベ…

『クロノス・ジョウンターの伝説』梶尾真治 7回書籍化された人気作品

四半世紀の間に7冊! もともとは1994年に朝日ソノラマより刊行されていた作品。朝日ソノラマの、今は亡き小説誌『グリフォン』に掲載されていた作品(「吹原和彦の軌跡」に相当)に、「布川輝良の軌跡」を追加したもの。 クロノス・ジョウンターの伝説 作者:…

『ラス・マンチャス通信』平山瑞穂 第16回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

異端として彷徨い続ける男の物語 2004年刊行。第16回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。平山瑞穂(ひらやまみずほ)のデビュー作である。 連作短編形式。幻想小説でありながらホラーの要素もあって、終わってみればビルドゥングスロマン的な側面も多分…

『ぼくのミステリな日常』 「黄金の13」から登場した若竹七海の第一作

若竹七海のデビュー作 1991年に東京創元社のミステリシリーズ「黄金の13」(←懐かしい!))で刊行されていた作品。若竹七海(わかたけななみ)は本作がデビュー作となる。 ぼくのミステリな日常 (黄金の13) 作者:若竹 七海 東京創元社 Amazon 創元推理文庫版…

『サクラオト』彩坂美月 五感をテーマとしたミステリ短編集

彩坂美月の10作目! 2021年刊行作品。集英社の文芸誌「小説すばる」に2012年~2018年にかけて発表されていた四編に、書下ろし二編を加えて上梓された作品。彩坂美月(あやさかみつき)としては、本作が十作目の著作である。 おススメ度、こんな方におススメ…

『復活の地』小川一水 大震災からの復興物語

小川一水による大都市災害復興シミュレーション 本日は小川一水(おがわいっすい)による『復活の地』全三巻の感想を一気にお届けしたい。『復活の地』は2004年刊行。ベストSF2004国内部門第三位の作品である。 『復活の地』はエスエフ仕立ての大都市災害復…

『シュガーな俺』平山瑞穂の三作目はまさかの糖尿病小説

自身の体験を元にした糖尿病小説! 2006年刊行。『ラス・マンチャス通信』『忘れないと誓ったぼくがいた』に続く、平山瑞穂の三作目。 帯のコピー曰く、なんと世界初の糖尿病小説らしい。33歳の若さで糖尿病と診断されてしまった作者自身の経験に基づくオート…

『天象儀の星』秋山完の初期作品集を堪能する

最初期の秋山完作品を楽しめる 秋山完(あきやまかん)は1995年の『ラストリーフの伝説』がデビュー作。作品数は現時点で11作。良い作品をいくつも書いている作家さんなのだけど、2005年の『プリンセスの義勇海賊(シュバリエ)』以降新作が無いのがとても残…

『ネリマ大好き』新井素子 練馬生まれ、練馬育ち、練馬在住民による練馬大好きエッセイ

濃厚な練馬愛に包まれる至福?の一冊 1992年刊行作品。作者の新井素子は練馬生まれの練馬育ち。高校は練馬区上石神井にある井草高校で、大学は立教。西武池袋線文化圏にどっぷり浸かって生きてきたような人間で、とにかく地元大好き。濃厚なネリマ愛が全編に…

『思い出が消えないうちに』川口俊和 明日世界が終るとしても

三年ぶりのシリーズ最新作『さよならも言えないうちに』が出たので、過去記事を再プッシュ。本日はシリーズ三作目の『思い出が消えないうちに』を再度ご紹介したい。 不思議な喫茶店の物語第三弾 2018年刊行作品。『コーヒーの冷めないうちに』『この嘘がば…

『信長の棺』加藤廣 サラリーマン夢のリタイア生活を描く

75歳作家のデビュー作 2005年刊行作品。作者の加藤廣(かとうひろし)は1930年生まれ。東大法卒。中小企業金融公庫⇒山一証券⇒フリー。そして小説家に。なんとデビュー時で75歳! 昔はいろいろな経歴を経てから、中年以降に作家デビューってパターンは多かっ…