ネコショカ

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『殴り合う貴族たち』繁田信一
藤原実資「小右記」から読む平安貴公子のご乱行

2022-01-01から1年間の記事一覧

『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』コニー・ウィリス 時間モノの傑作

ヒューゴー賞・ローカス賞ダブル受賞作 2004年刊行作品。作者のコニー・ウィリス(Connie Willis)は1945年生まれのアメリカ人エスエフ作家。 オリジナルの米国版は1998年に刊行されている。原題は『To Say Nothing of the Dog』。ヒューゴー賞・ローカス賞受賞…

『その意図は見えなくて』藤つかさ 安楽椅子探偵には解決できないことがある

藤つかさのデビュー作 2022年刊行作品。作者の藤(ふじ)つかさは、1992年生まれのミステリ作家。2020年の「見えない意図」(単行本収録時に「その意図は見えなくて」に改題されている)が、第42回の小説推理新人賞を受賞し作家デビューを果たす。 本書『そ…

「グイン・サーガ」40年目の到達点!あの人はどうなった?

栗本薫「グインサーガ」のキャラクターがその後どうなったか、シリーズ40年分のネタバレまとめ。 五代ゆう、宵野ゆめによる続篇については全話感想を掲載。 リタイア組も、継続組の方も是非ご覧ください。

グインサーガ続篇148巻『トーラスの炎』(最新刊) イシュトヴァーンの闇堕ちが止まらない

続篇グイン・サーガ2年4カ月ぶりの新刊 2022年刊行作品。続篇グイン・サーガとしては、なんと2年4カ月ぶりの新刊である。もう出ないのでは?打ち切りなのでは?と思っていた読者も多いはず(ちょっと思っていたわたし、スミマセン)。 続篇グイン、もう一人の…

『朝日のようにさわやかに』恩田陸 14編を収録した第二短編集

14編を収録したバラエティに富んだ短編集 2007年刊行作品。『図書室の海』に続く恩田陸の第二短編集である。この当時、既に恩田陸の刊行ペースは相当に早く、ほぼ毎月なにかしら作品が出ている状態であった。この時期の多作ぶりはホントに凄かった。デビュー…

『銀河帝国の弘法も筆の誤り』田中啓文 「バカSF」をとことん楽しめる一作

SF

第33回星雲賞受賞作を含む短編集 2001年刊行作品。SFマガジン1997年8月号、2000年2月号、、SFマガジン1999年9月臨時増刊号に掲載された作品に加え、表題作を含む書き下ろし二作を加えたSF短編集である。表題作である「銀河帝国の弘法も筆の誤り」は第33回星雲…

『煙か土か食い物』舞城王太郎 第19回メフィスト賞受賞作

舞城王太郎衝撃のデビュー作 2001年刊行作品。第19回のメフィスト賞受賞作品である。舞城王太郎(まいじょうおうたろう)最初の作品である。舞城王太郎は1973年生まれで、福井県出身。しかし、それ以外の経歴は一切公表されていない覆面作家である。 本作は…

『#真相をお話します』結城真一郎 想像を超えた「真相」に震撼せよ!

日本推理作家協会賞、受賞作を収録 2022年刊行作品。作者の結城真一郎(ゆうきしんいちろう)は1991年生まれのミステリ作家。2018年に『スターダスト・ナイト』(刊行時のタイトルは『名もなき星の哀歌』)が第5回新潮ミステリー大賞を受賞し作家としてのデビ…

『魔導物語'98』『真・魔導物語外伝』『真・魔導物語』織田健司 懐かしの『魔導物語』ノベライズ三作をまとめて紹介

本日は1998年~2001年にかけて刊行されていた、ゲーム『魔導物語』に関する、一連のノベライズ作品ご紹介した。古いネタでごめんよ。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) ゲーム『魔導物語』をプレイしたことがある方。ほんわか…

『殺人喜劇の13人』芦辺拓 第1回の鮎川賞受賞作

芦辺拓のデビュー作 1990年刊行作品。作者の芦辺拓(あしべたく)は1958年生まれ。本作がデビュー作となる。東京創元社による公募新人賞、鮎川哲也賞の第一回目の受賞作品である。ちなみに、この時の佳作入選が二階堂黎人の『吸血の家』であった。 芦辺拓に…

『傀儡后』牧野修 醜悪さも突き詰めると美に変る

日本SF大賞受賞作品 2002年刊行作品。同年の第23回日本SF大賞を受賞。そして、ベストSF2002では国内部門8位にランクインしている作品である。作者の牧野修(まきのおさむ)は1958年生まれのエスエフ作家。単行本版はハヤカワSFシリーズ Jコレクションの一冊…

『腹を割ったら血が出るだけさ』住野よる 本当の自分はこうじゃない!でもすべてをさらけ出すのは怖い

住野よるの九作目 2022年刊行作品。書下ろし。作者の住野(すみの)よるは2015年に『君の膵臓をたべたい』にデビュー。以来、毎年ほぼ1冊新刊を上梓しており、本作が九作目になる。 表紙イラストは房野聖(ぼうのさとし)が担当している。 住野よるの既刊は…

『葬列』小川勝己、戦慄のラストに痺れる

小川勝己のデビュー作 2000年刊行作品。第20回(2000年)横溝正史賞の大賞受賞作品である。 作者の小川勝己(おがわかつみ)は1965年生まれ。本作がデビュー作となり、以後十数作の著作がある。ただ、ここ十年程は新作が出ておらず、動向が気になるところで…

『絶対猫から動かない』新井素子 「いつか猫になる日まで」50'sとして懐かしく読む

新井素子としては珍しい雑誌連載作 2020年刊行作品。KADOKAWAの電子メディア文芸誌「文芸カドカワ」に2017年1月号~2019年8月号まで。「文芸カドカワ」の後継媒体である「カドブンノベル」の2019年9月号~12月号まで連載されていた作品を単行本化したもの。 …

『月の扉』石持浅海、ハイジャック機の中に密室死体!

「座間味くん」が登場する最初の作品 2003年刊行作品。光文社の新書レーベル、カッパ・ノベルスからの刊行だった。 2002年に『アイルランドの薔薇』でデビューした、石持浅海(いしもちあさみ)の二作目である。2004年版の「このミス」で国内編の第8位、「本…

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼 「すべてが伏線」は伊達じゃない

三冠獲得!2019年を代表するミステリ作品『medium 霊媒探偵城塚翡翠』のネタバレ感想。相沢沙呼の代表作にないそうですね。 作中に周到に張り巡らされた伏線の数々について考察してみました。

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午 事前情報なしで一気に最後まで読んで欲しい名作

2003年の国内ミステリ界を席巻した名作 2003年刊行作品。この年の「 このミステリーがすごい! 」と「本格ミステリベスト10」でいずれも第一位。「週刊文春 推理小説ベスト10」では第二位。更に第4回本格ミステリ大賞と、第57回の日本推理作家協会賞を受賞し…

『恋する女たち』氷室冴子 原作小説版+映画版・マンガ版も解説!

氷室冴子『恋する女たち』のネタバレ感想、あらすじ、カバーデザインの違い、物語の舞台となった岩見沢についてのご当地ネタを収録。斉藤由貴主演、1986年の映画版や、1987年のマンガ版との違いについても解説しています。

『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』深水黎一郎 究極のトリックを描くメフィスト賞受賞作

深水黎一郎のデビュー作 2007年刊行作品。第36回のメフィスト賞受賞作品。タイトルの「ウルチモ・トルッコ」はイタリア語で究極のトリックを意味する。作者の深水黎一郎(ふかみれいいちろう)は1963年生まれのミステリ作家。本作『ウルチモ・トルッコ』がデ…

『黄泉がえり』梶尾真治 よみがえる死者たち、彼らの正体、目的は?

SF

梶尾真治の一般知名度を高めた作品 2000年刊行作品。ハートウォーミングなエスエフを書かせたら当代随一の梶尾真治が地元熊本を舞台に書き上げたのが本作。草彅クンの映画で有名になったから、一般的にはカジシンの出世作と呼ぶことが出来そうだ。もっとも映…

『撓田(しおなだ)村事件』小川勝己 横溝正史へのオマージュ作品

横溝正史ミステリ大賞受賞者が描く本格ミステリ 2002年刊行。2000年に『葬列』で第20回横溝正史ミステリ大賞を受賞してデビューした小川勝己(おがわかつみ)の五作目の作品である。新潮社のハードカバー単行本シリーズ、「新潮ミステリー倶楽部」枠からの登…

『R.P.G.』宮部みゆき クロスファイアの石津さんと模倣犯の武上さんが競演

『クロスファイア』×『模倣犯』 2001年刊行作品。単行本で出すには短く、他の短編に混ぜるに独立性が強すぎるということであえて文庫書き下ろしの形で刊行された作品。それでも300頁近くあるのだから、十分単行本で出しても良かったような気が……。出版社的に…

『Iの悲劇』米澤穂信 限界集落は再生する?「甦り課」の活躍を描く公務員ミステリ

米澤穂信が描く公務員小説 2019年刊行作品。文藝春秋のミステリ誌「オールスイリ」、小説誌「オール読物」に掲載されていた短編作品四作に、序章の「Iの悲劇」、終章の「Iの喜劇」、更に書下ろし二編を加えて上梓されたもの。 Iの悲劇 作者:穂信, 米澤 文藝…

『銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談』高里椎奈 第11回メフィスト賞受賞作

高里椎奈のデビュー作 1999年刊行作品。第11回メフィスト賞受賞作である。高里椎奈(たかさとしいな)のデビュー作品にして「薬屋探偵」シリーズの第一作となる。 高里椎奈は1976年生まれ。「薬屋探偵」シリーズや、「フェンネル大陸」シリーズ、最近では「…

『密室の鍵貸します』東川篤哉のデビュー作はユーモア×本格ミステリ

東川篤哉の第一作はKAPPA-ONE登龍門から 2002年刊行作品。作者の東川篤哉(ひがしがわとくや)は1968年生まれ。短編作品でのキャリアは1996年からあったものの、本作が最初の長編作品となっている。 密室の鍵貸します (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン) 作者:…

『あたしのマブイ見ませんでしたか』池上永一、初の短編集

池上永一の三作目 1999年刊行作品。「Seven Seas」「週刊小説」に95年~99年にかけて発表された作品群をまとめたものである。長編作品が印象に残りがちな池上永一(いけがみえいいち)だが、本書はそんな彼の初の短編集だ。『バガージマヌパナス』『風車祭(…

『恋に至る病』斜線堂有紀 150人を死に追いやった女子高生と幼馴染の少年の物語

tiktokで人気爆発した作品 2020年3月刊行作品。斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)のちょうど10作目。『詐欺師は天使の顔をして』の次、『楽園とは探偵の不在なり』の前に出た作品。イラストはくっかが担当している。 2019年~2021年にかけての斜線堂有紀は毎…

『時砂の王』小川一水 時をめぐる大いなる戦いの果てに

時間モノの醍醐味を堪能できる一作 2007年刊行作品。本作『時砂(ときすな)の王』は文庫書き下ろし作品だった。 どうしてJコレクション枠で出なかったのが謎である。小川一水(おがわいっすい)はハヤカワからは既に『第六大陸 』『復活の地』を上梓してお…

『日曜日の沈黙』石崎幸二 第18回メフィスト賞受賞

ミリア&ユリシリーズの一作目 2000年刊行作品。第18回のメフィスト賞受賞作。作者の石崎幸二(いしざきこうじ)は1963年生まれのミステリ作家。本作『日曜日の沈黙』がデビュー作である。 本作はノベルス版のみであり、残念ながら文庫化はされていない。 と…

『ラットマン』道尾秀介 最後まで気が抜けないミステリ作品

道尾秀介、初期の代表作 2008年刊行作品。光文社のミステリ専門誌『ジャーロ』の2007年夏号、秋号に掲載されていたものを単行本化したもの。作者の道尾秀介(みちおしゅうすけ)は1975年生まれの小説家。2005年の『背の眼』デビュー作で、本作が8作目になる…