ネコショカ

小説以外の書籍感想はこちら!
『殴り合う貴族たち』繁田信一
藤原実資「小右記」から読む平安貴公子のご乱行

『ぼくのキャノン』池上永一 旧日本軍の残したカノン砲が信仰を集める世界

池上永一の六作目 2003年刊行。作者の池上永一(いけがみえいいち)は1970年生まれ。『バガージマヌパナス』で第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。本作は、『バガージマヌパナス』『風車祭』『あたしのマブイ見ませんでしたか』『レキオス』…

『ナイフ投げ師』スティーヴン・ミルハウザー 幻想、不穏さ、謎の歴史、他では読めない独特の世界

ミルハウザーの第三短編集 オリジナルの米国版は1998年に刊行されており原題は「The Knife Thrower」。 作者のスティーヴン・ミルハウザー(Steven Millhauser)は1943年生まれのアメリカ人作家。デビュー作は1972年の『エドウィン・マルハウス―あるアメリカ…

『緋色の記憶』トマス・H・クック 追憶の中の物語

アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)受賞作 1998年刊行。オリジナルの米国版は1996年刊行で原題は「The Chatham School Affair」。作者のトマス・H・クック(Thomas H. Cook)は1947年生まれのアメリカ人作家。 1997年度のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー…

『虹の涯(はて)』戸田義長 天狗党の藤田小四郎を主人公とした歴史ミステリ

戸田義長の第三作 2022年刊行作品。作者の戸田義長(とだよしなが)は1963年生まれのミステリ作家。 2017年、第27回鮎川哲也賞に応募した『恋牡丹』が最終候補作となったものの、惜しくも選外に(この年の鮎川賞は今村昌弘の『屍人荘の殺人』だった)。同作…

『曽我兄弟より熱を込めて』坂口螢火 「曽我兄弟の仇討ち」はどんな事件だったのがわかる一冊

「曽我兄弟の仇討ち」を題材とした歴史小説 本日ご紹介する『曽我兄弟より熱を込めて』は2023年の刊行作品。著者の坂口螢火(さかぐちけいか)さんより著作をご恵贈頂き、感想を書かせていただきました。坂口さんありがとうございます! 巻末の作者プロフィ…

『凶手』アンドリュー・ヴァクス 行間から溢れる狂おしいまでの哀しみ

男と女のロマン・ノワール 1994年刊行作品。オリジナルの米国版は1993年刊行。原題は『Shella』。 凶手 (Hayakawa Novels) 作者:アンドリュー ヴァクス 早川書房 Amazon かれこれ30年も前の作品ということになる。作者のアンドリュー・ヴァクス(Andrew H. Va…

『ふわふわの泉』野尻抱介 某超有名SF作品へのオマージュ

タイトルはふわふわしているけど内容はハードSF 2001年刊行作品。最初の文庫版はライトノベルレーベルのファミ通文庫から登場。2002年星雲賞の日本長編部門を受賞。ハヤカワのベストSF2001国内部門の6位にランクインしている。作者の野尻抱介(のじりほうす…

『爆弾』呉勝浩 連続爆破事件を警察は止めることが出来るのか

2023年版「このミス」「ミステリが読みたい」二冠! 2022年刊行作品。筆者の呉勝浩(くれかつひろ)は1981年生まれのミステリ作家。デビュー作は、第61回の江戸川乱歩賞を受賞した2015年の『道徳の時間』だ。 その後、毎年コンスタントに新作を上梓。2018年…

『殉教カテリナ車輪』飛鳥部勝則 図像学×ミステリの面白さ

飛鳥部勝則の第一作品 1998年刊行作品。第九回鮎川哲也賞受賞作品。飛鳥部勝則(あすかべかつのり)のデビュー作である。宝島社の99年版「このミステリーがすごい!」では国内部門の12位、「本格ミステリ・ベスト10」で3位にそれぞれランクインしている。 作…

『こわれもの』浦賀和宏 終盤の怒涛の展開に驚かされる一作

浦賀和宏の初徳間作品 2002年刊行作品。 デビュー作の『記憶の果て』以降、主として安藤直樹シリーズを中心に執筆活動を続けてきた浦賀和宏(うらがかずひろ)だが、2001年の『眠りの牢獄』『彼女は存在しない』あたりから、非安藤モノも書くようになってき…

『『ギロチン城』殺人事件』北山猛邦 自動人形の謎とふたりの探偵役

北山猛邦の城シリーズ四作目 2005年刊行作品。北山猛邦(きたやまたけくに)による『『クロック城』殺人事件』 『『瑠璃城』殺人事件』『『アリス・ミラー城』殺人事件』に続く、城シリーズの四作目である。シリーズ最終作(いまのところ)ではあるが、それぞ…

『逆転美人』藤崎翔 紙の本でしかできない驚きの仕掛けを堪能しよう!

いま話題のミステリ本『逆転美人』 2022年刊行作品。作者の藤崎翔(ふじさきしょう)は、1985年生まれのミステリ作家。若いころはお笑い芸人であったことでも知られている。 デビュー作は第34回の横溝正史ミステリ大賞を受賞した『神様の裏の顔』(2014年刊…

『停電の夜に』ジュンパ・ラヒリ 不安、喪失感、行き違う心、そして言ってはいけない言葉

ジュンパ・ラヒリのデビュー作 2000年刊行作品。新潮社の外国文学レーベル「新潮クレスト・ブックス」からの登場だった。オリジナルの米国版は1999年刊行で、原題は『Interpreter of Maladies(病気の通訳)』。 作者のジュンパ・ラヒリ(Jhumpa Lahiri)は1967…

グイン・サーガ外伝27巻『サリア遊郭の聖女1』円城寺忍 三か月連続刊行、久しぶりの「月刊グインサーガ」!

栗本薫亡きあとのグインサーガ外伝五作目 2023年刊行作品。グインサーガ外伝としては27冊目。作者の円城寺忍(えんじょうじしのぶ)は、2014年刊行、グインサーガ外伝26巻の『黄金の盾』がデビュー作。本作が9年振りの新作で、待望の第二作ということになる…

『鴉(からす)』麻耶雄嵩 メルカトル鮎が格好いい!!

「本格ミステリ・ベスト10」で第1位! 1997年刊行作品。1998年版の「このミステリーがすごい!」の国内編で16位、「本格ミステリ・ベスト10」では1位に輝いた作品である。銘探偵メルカトル鮎が登場する長編作品としては、1991年の『翼ある闇』、 1993年の『夏…

『『アリス・ミラー城』殺人事件』北山猛邦 ルイス・キャロル作品をモチーフとした城で起こった殺人事件

北山猛邦の城シリーズ三作目 2003年刊行作品。北山猛邦(きたやまたけくに)の『『クロック城』殺人事件』 『『瑠璃城』殺人事件』に続く、城シリーズの三作目。 『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社ノベルス) 作者:北山 猛邦 講談社 Amazon 講談社文庫版…

『よるのばけもの』住野よる 「矢野さつきが示した三人」は誰なのか?

住野よるの三作目 2016年刊行作品。『君の膵臓をたべたい』『また、同じ夢を見ていた』に続く、住野よるの第三作である。 よるのばけもの 作者:住野 よる 双葉社 Amazon 双葉文庫版は2019年に発売されている。単行本版と比べて、表紙の雰囲気が全然変わった…

『栞と嘘の季節』米澤穂信 堀川と松倉の図書委員コンビが帰ってきたよ!

図書委員シリーズの二作目 2022年刊行作品。タイトルの『栞と嘘の季節』の読みは「しおりとうそのきせつ」。作者の米澤穂信(よねざわほのぶ)としては、『黒牢城』で第166回直木三十五賞を受賞した後の第一作でもある。 「図書委員」シリーズは、東京郊外の…

『火蛾(ひが)』古泉迦十 イスラム世界を舞台とした異色のミステリ

謎のメフィスト賞作家、古泉迦十 2000年刊行作品。第17回メフィスト賞受賞作である。 タイトルの『火蛾』は「ひが」と読み、作者名の古泉迦十は「こいずみかじゅう」と読む。『火蛾』は古泉迦十のデビュー作にして、2020年現在、唯一の作品となっている。 刊…

『いざ言問はむ都鳥』澤木喬と「創元ミステリ'90」

「創元ミステリ'90」の一作として 1991年刊行作品。作者の澤木喬(さわききょう)は1961年生まれのミステリ作家。単行本版の帯に「才媛」とあるので性別は女性かと思われる。「創元ミステリ'90」の一冊としての登場であった。 いざ言問はむ都鳥 (創元ミステ…

『『瑠璃城』殺人事件』北山猛邦 時空を超えて連鎖する不可能犯罪の謎

北山猛邦の城シリーズ二作目 2002年刊行作品。デビュー作の『クロック城』殺人事件』 に続く、北山猛邦(きたやまたけくに)の城シリーズ二作目でもある。タイトルの『『瑠璃城』殺人事件』の読みは「るりじょうさつじんじけん」である。 『瑠璃城』殺人事件…

『君の教室が永遠の眠りにつくまで』鵺野莉紗 あの日、教室で何が起きたのか?

鵺野莉紗のデビュー作 2022年刊行作品。タイトルの『君の教室が永遠の眠りにつくまで』の読みは「きみのきょうしつがとわのねむりにつくまで」。英題は「A DREAM OF SLEEPING BEAUTIES」。 作者の鵺野莉紗(ぬえのりさ)は1991年生まれのミステリ作家。本作…

『熊の場所』初の短編集、ミステリのくびきから解き放たれた舞城王太郎

舞城王太郎の四作目 2002年刊行。「群像」掲載の二作に書き下ろし(「ピコーン!」)を加えて単行本化したもの。作中の短編「熊の場所」は第15回の三島由紀夫賞の候補作品である。 舞城王太郎(まいじょうおうたろう)としては、『煙か土か食い物』『暗闇の中…

『『クロック城』殺人事件』北山猛邦の「城」シリーズ一作目

第24回メフィスト賞受賞、北山猛邦のデビュー作 2002年刊行作品。第24回のメフィスト賞受賞作品。作者の北山猛邦(きたやまたけくに)は1979年生まれのミステリ作家。本作『『クロック城』殺人事件』がデビュー作となる。メフィスト賞応募時のタイトルは「失…

『魔女の子供はやってこない』矢部嵩 暗黒系ガールミーツガールの傑作に戦慄せよ

暗黒魔法少女降臨! 2013年刊行作品。作者の矢部嵩(やべたかし)は1986年生まれのホラー作家。2006年の『紗央里ちゃんの家』にて、第13回の日本ホラー小説大賞長編賞を受賞し、作家としてのデビューを果たしている。本作は、2009年の『保健室登校』に続く、…

『罪の声』塩田武士 グリコ森永事件をベースとした社会派ミステリの傑作

塩田武士の代表作 2016年刊行作品。2017年本屋大賞で3位、2016年度の週刊文春ミステリーベスト10国内部門1位、第7回山田風太郎賞の受賞作品である。 作者の塩田武士(しおたたけし)は1979年生まれ。2001年の『盤上のアルファ』がデビュー作。前職は新聞記者…

『ネクロポリス』恩田陸 聖地アナザーヒルでは死者と再会できる

恩田陸最長クラスの大長編 2005年刊行作品。「小説トリッパー」の2001年冬季号から2005年春季号にかけて連載されていた作品を大幅に加筆修正の上で単行本化したもの。上下巻構成で総ページ数785ページは恩田作品中でも最長クラスの大ボリュームである。 恩田…

エドワード・ゴーリーの邦訳全作をご紹介!

※2023/3/6追記 渋谷の松濤美術館で「エドワード・ゴーリーを巡る旅」展!4/8~6/11まで。これは行かないと!! 邦訳されているゴーリー作品を全て紹介! エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)は1925年生まれ。アメリカ人絵本作家である。2000年に亡くなられ…

『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。』青柳碧人 昔話世界ならではの特殊設定ミステリが面白い!

昔話×ミステリの第四作 2022年刊行作品。双葉社のミステリ小説誌「小説推理」で、2021年~2022年にかけて掲載されていた四作に、書下ろし一作を加えて単行本化したもの。 表紙イラストは今回も、五月女(そおとめ)ケイ子が担当している。五月女ケイ子の「濃…

『人間臨終図巻』山田風太郎 総計923人の死にざまを綴った異色作

古今東西の偉人たちの死にざま 筆者の山田風太郎(やまだふうたろう)は、1922年生まれの小説家。ミステリ作品から、忍法帖シリーズや室町モノ、明治モノと膨大な小説作品を残したこの作家だが、本作のようなエッセイ(と言っていいのかな?)作品も残してい…