ネコショカ

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『殴り合う貴族たち』繁田信一
藤原実資「小右記」から読む平安貴公子のご乱行

ミステリ

『少女は踊る暗い腹の中踊る』岡崎隼人 第34回メフィスト賞受賞作

岡崎隼人、最初で最後の作品 2006年刊行。第34回メフィスト賞受賞作品。作者の岡崎隼人(おかざきはやと)は1985年生まれなので、受賞時は21歳くらいか。わりかし若い作家が受賞することが多いメフィスト賞としてもかなり若い方だよね。 ノベルス版のみで文…

『新本格魔法少女りすか4』西尾維新 17年かけてついにシリーズ完結!

「りすか」シリーズついに最終巻! 2020年刊行作品。『新本格魔法少女りすか』『新本格魔法少女りすか2』『新本格魔法少女りすか3』に続く、「りすか」シリーズの四作目。2004年に始まった「りすか」シリーズが17年の歳月をかけて遂に完結した。西尾維新やれ…

『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』白井智之 奇跡VS探偵のロジック

2022年のミステリ界を席巻! 2022年刊行作品。作者の白井智之(しらいともゆき)は1990年生まれのミステリ作家。デビュー作は2014年の『人間の顔は食べづらい』。同作は第34回の横溝正史ミステリ大賞の最終候補作のひとつであった。 『名探偵のいけにえ』は…

『早朝始発の殺風景』青崎有吾 高校生たちの気まずい密室

青春は気まずさでできた密室 2019年刊行作品。集英社の小説誌「小説すばる」に2016年~2018年にかけて掲載されていた作品をまとめたもの。「エピローグ」部分は単行本刊行時の書き下ろしとなっている。第73回日本推理作家協会賞の、長編および連作短編集部門…

『それでも君が』高里椎奈のドルチェ・ビスタシリーズ

高里椎奈による「密室本」 2002年刊行作品。講談社ノベルズ20周年企画「密室本」の一冊である。高里椎奈(たかさとしいな)と言えば、薬屋探偵シリーズが定番だったが(当時)、本作は初の非薬屋シリーズ作品だった。 その後『お伽話のように』『左手をつな…

『真っ暗な夜明け』氷川透 第15回メフィスト賞受賞作

覆面作家、氷川透のデビュー作 2000年刊行作品。第15回のメフィスト賞受賞作品である。氷川透(ひかわとおる)の最初の作品。この作家、東京大学文学部卒であることは開示されているのだが、それ以外のプロフィールがまったく不明と言う覆面作家である。性別…

『殺しも鯖もMで始まる 地底の密室!』浅暮三文 講談社ノベルス20周年記念「密室本」の一冊

浅暮三文による「密室本」 2002年刊行作品。1998年に『ダブ(エ)ストン街道』で第8回のメフィスト賞を受賞した浅暮三文(あさぐれみつふみ)としては6作目の作品となる。 なお、文庫化はされていない。 作者の浅暮三文は1959年生まれ。作家になる前はコピーラ…

『オルガニスト』山之口洋 第10回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

山之口洋のデビュー作 1998年刊行作品。第10回日本ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作品である。ちなみにこの年の優秀賞は沢村凛の『ヤンのいた島』と涼元悠一の『青猫の街』である。 作者の山之口洋(やまのぐちよう)は1960年生まれ。本作がデビュー作と…

『狼の寓話 南方署強行犯係』近藤史恵の描く警察小説の第一弾

新人&女性刑事のバディもの 2003年刊行作品。近藤史恵(こんどうふみえ)初の警察小説。本作がこれで16作目。最初に出たのはトクマ・ノベルズ版だった。 狼の寓話―南方署強行犯係 (トクマ・ノベルズ) 作者:近藤 史恵 徳間書店 Amazon 徳間文庫版は2007年に刊…

『罪灯(つみともしび)』佐々木丸美 未必の故意による犯罪

当ブログは原則としてネタバレありでお届けしているが、本作については佐々木丸美の「館」シリーズについても軽度のネタバレを含んでいる。未読の方はご注意ください! 最後期の佐々木丸美作品 1983年刊行作品。佐々木丸美(ささきまるみ)としては15作目の…

『世界は密室でできている』舞城王太郎 「奈津川サーガ」スピンアウト作品

舞城王太郎の「密室本」 2002年刊行作品。『煙か土か食い物』『暗闇の中で子供』に続く、舞城王太郎(まいじょうおうたろう)の三作目にあたる作品。 浅暮三文の『殺しも鯖もMで始まる 地底の密室!』や高里椎奈の『それでも君が』と同様に、講談社ノベルズ2…

『模倣の殺意』中町信 復刊したら40万部も売れてしまった作品

何度もタイトルを変えて復活した中町信のデビュー作 作者の中町信(なかまちしん)は1935年生まれ。出版社勤務を経て1989年から専業化。90年代に数多くのミステリ作品を発表した作家であるが、残念ながら2009年に他界されている。 2005年刊行の作品だが、本…

『鉄の枷』ミネット・ウォルターズ 中世の拘束具を被せられた死体の謎

ミネット・ウォルターズの三作目 オリジナルの英国版は1994年刊行で、原題は『The Scold's Bridle』。邦訳版は1996年に登場している。 鉄の枷 作者:ミネット ウォルターズ 東京創元社 Amazon わたしが読んだのは2002年に刊行された創元推理文庫版である。 作…

『黙過の代償』森山赳志 第33回メフィスト賞受賞作

森山赳志、唯一の作品 2005年刊行作品。タイトルは「もっかのだいしょう」と読む。第33回のメフィスト賞受賞作品である。メフィスト賞には珍しい国際謀略モノだ。作者の森山赳志(もりやまたけし)は1971年生まれ。本作がデビュー作だが、残念ながらこれ以降…

『象と耳鳴り』恩田陸 元判事を主人公としたミステリ短編集

恩田陸のミステリ短編集 1999年刊行作品。主として祥伝社の小説誌『小説NON』に掲載されていた一連の作品をまとめて書籍化したもの。『光の帝国 常野物語』の次、『木曜組曲』の前に出た作品で、恩田陸の第六作となる。 象と耳鳴り 作者:恩田 陸 祥伝社 Amaz…

『暗闇の中で子供』舞城王太郎 「奈津川サーガ」の第二作はなぜ文庫化されないのか?

メフィスト賞受賞後、初の作品 2001年刊行作品。『煙か土か食い物』で第19回のメフィスト賞を受賞した舞城王太郎(まいじょうおうたろう)の第二作。「奈津川サーガ」と呼ばれる一連のシリーズの二作目でもある。 全貌が判りにくい「奈津川サーガ」 奈津川家…

『invert II 覗き窓の死角』相沢沙呼 城塚翡翠シリーズの三作目

翡翠ちゃんシリーズの三冊目! 2022年刊行作品。サブタイトルの『覗き窓の死角』には「ファインダーのしかく」とルビが振られている。「のぞきまどのしかく」ではないので気をつけたい。 表紙イラストは、前作、前々作に引き続き、ヒットメーカー遠田志帆(…

『変な絵』雨穴 あなたにはこの絵の「謎」が解けますか?

9枚の「図絵」がからみあうスケッチ・ミステリー 2022年刊行作品。前作『変な家』が40万部超の大ヒットとなった雨穴(うけつ)の第二作である。本作『変な絵』も発売早々に、発行部数20万部を超える売り上げをたたき出しており、雨穴は僅か一年で、ヒットを連…

『此の世の果ての殺人』荒木あかね 終末の世界、女性バディモノ✖ロードノベルの魅力

史上最年少、選考委員満場一致の乱歩賞受賞作 2022年刊行作品。作者の荒木あかねは1998年生まれのミステリ作家。本作『此の世の果ての殺人(このよのはてのさつじん)』で第68回の江戸川乱歩賞を受賞し、作家としてのデビューを果たしている。受賞当時23歳は…

『Twelve Y.O.』福井晴敏 第44回江戸川乱歩賞受賞作

最初に刊行された福井晴敏作品 1998年刊行作品。第44回の江戸川乱歩賞受賞作品である。ちなみにタイトルの『Twelve Y.O.』は「とぅえるぶ わい おー」と読む(そのまんまだ)。 作者の福井晴敏は1968年生まれ。ちなみに同時受賞は池井戸潤の『果つる底なき』…

『楽園とは探偵の不在なり』斜線堂有紀 二人殺せば地獄行きの世界で連続殺人は可能か?

斜線堂有紀、初のハードカバー作品? 2020年刊行作品。作者の斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)は1993年生まれ。『キネマ探偵カレイドミステリー』で電撃小説大賞の「メディアワークス文庫賞」を受賞し、2017年に作家デビューを果たしている。 当初はメディ…

『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』コニー・ウィリス 時間モノの傑作

ヒューゴー賞・ローカス賞ダブル受賞作 2004年刊行作品。作者のコニー・ウィリス(Connie Willis)は1945年生まれのアメリカ人エスエフ作家。 オリジナルの米国版は1998年に刊行されている。原題は『To Say Nothing of the Dog』。ヒューゴー賞・ローカス賞受賞…

『その意図は見えなくて』藤つかさ 安楽椅子探偵には解決できないことがある

藤つかさのデビュー作 2022年刊行作品。作者の藤(ふじ)つかさは、1992年生まれのミステリ作家。2020年の「見えない意図」(単行本収録時に「その意図は見えなくて」に改題されている)が、第42回の小説推理新人賞を受賞し作家デビューを果たす。 本書『そ…

『朝日のようにさわやかに』恩田陸 14編を収録した第二短編集

14編を収録したバラエティに富んだ短編集 2007年刊行作品。『図書室の海』に続く恩田陸の第二短編集である。この当時、既に恩田陸の刊行ペースは相当に早く、ほぼ毎月なにかしら作品が出ている状態であった。この時期の多作ぶりはホントに凄かった。デビュー…

『煙か土か食い物』舞城王太郎 第19回メフィスト賞受賞作

舞城王太郎衝撃のデビュー作 2001年刊行作品。第19回のメフィスト賞受賞作品である。舞城王太郎(まいじょうおうたろう)最初の作品である。舞城王太郎は1973年生まれで、福井県出身。しかし、それ以外の経歴は一切公表されていない覆面作家である。 本作は…

『#真相をお話します』結城真一郎 想像を超えた「真相」に震撼せよ!

日本推理作家協会賞、受賞作を収録 2022年刊行作品。作者の結城真一郎(ゆうきしんいちろう)は1991年生まれのミステリ作家。2018年に『スターダスト・ナイト』(刊行時のタイトルは『名もなき星の哀歌』)が第5回新潮ミステリー大賞を受賞し作家としてのデビ…

『殺人喜劇の13人』芦辺拓 第1回の鮎川賞受賞作

芦辺拓のデビュー作 1990年刊行作品。作者の芦辺拓(あしべたく)は1958年生まれ。本作がデビュー作となる。東京創元社による公募新人賞、鮎川哲也賞の第一回目の受賞作品である。ちなみに、この時の佳作入選が二階堂黎人の『吸血の家』であった。 芦辺拓に…

『葬列』小川勝己、戦慄のラストに痺れる

小川勝己のデビュー作 2000年刊行作品。第20回(2000年)横溝正史賞の大賞受賞作品である。 作者の小川勝己(おがわかつみ)は1965年生まれ。本作がデビュー作となり、以後十数作の著作がある。ただ、ここ十年程は新作が出ておらず、動向が気になるところで…

『月の扉』石持浅海、ハイジャック機の中に密室死体!

「座間味くん」が登場する最初の作品 2003年刊行作品。光文社の新書レーベル、カッパ・ノベルスからの刊行だった。 2002年に『アイルランドの薔薇』でデビューした、石持浅海(いしもちあさみ)の二作目である。2004年版の「このミス」で国内編の第8位、「本…

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼 「すべてが伏線」は伊達じゃない

三冠獲得!2019年を代表するミステリ作品『medium 霊媒探偵城塚翡翠』のネタバレ感想。相沢沙呼の代表作にないそうですね。 作中に周到に張り巡らされた伏線の数々について考察してみました。