ネコショカ

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『殴り合う貴族たち』繁田信一
藤原実資「小右記」から読む平安貴公子のご乱行

4つ★(おススメ!)

『停電の夜に』ジュンパ・ラヒリ 不安、喪失感、行き違う心、そして言ってはいけない言葉

ジュンパ・ラヒリのデビュー作 2000年刊行作品。新潮社の外国文学レーベル「新潮クレスト・ブックス」からの登場だった。オリジナルの米国版は1999年刊行で、原題は『Interpreter of Maladies(病気の通訳)』。 作者のジュンパ・ラヒリ(Jhumpa Lahiri)は1967…

『栞と嘘の季節』米澤穂信 堀川と松倉の図書委員コンビが帰ってきたよ!

図書委員シリーズの二作目 2022年刊行作品。タイトルの『栞と嘘の季節』の読みは「しおりとうそのきせつ」。作者の米澤穂信(よねざわほのぶ)としては、『黒牢城』で第166回直木三十五賞を受賞した後の第一作でもある。 「図書委員」シリーズは、東京郊外の…

『火蛾(ひが)』古泉迦十 イスラム世界を舞台とした異色のミステリ

謎のメフィスト賞作家、古泉迦十 2000年刊行作品。第17回メフィスト賞受賞作である。 タイトルの『火蛾』は「ひが」と読み、作者名の古泉迦十は「こいずみかじゅう」と読む。『火蛾』は古泉迦十のデビュー作にして、2020年現在、唯一の作品となっている。 刊…

『『瑠璃城』殺人事件』北山猛邦 時空を超えて連鎖する不可能犯罪の謎

北山猛邦の城シリーズ二作目 2002年刊行作品。デビュー作の『クロック城』殺人事件』 に続く、北山猛邦(きたやまたけくに)の城シリーズ二作目でもある。タイトルの『『瑠璃城』殺人事件』の読みは「るりじょうさつじんじけん」である。 『瑠璃城』殺人事件…

『魔女の子供はやってこない』矢部嵩 暗黒系ガールミーツガールの傑作に戦慄せよ

暗黒魔法少女降臨! 2013年刊行作品。作者の矢部嵩(やべたかし)は1986年生まれのホラー作家。2006年の『紗央里ちゃんの家』にて、第13回の日本ホラー小説大賞長編賞を受賞し、作家としてのデビューを果たしている。本作は、2009年の『保健室登校』に続く、…

『罪の声』塩田武士 グリコ森永事件をベースとした社会派ミステリの傑作

塩田武士の代表作 2016年刊行作品。2017年本屋大賞で3位、2016年度の週刊文春ミステリーベスト10国内部門1位、第7回山田風太郎賞の受賞作品である。 作者の塩田武士(しおたたけし)は1979年生まれ。2001年の『盤上のアルファ』がデビュー作。前職は新聞記者…

『金環日蝕』阿部暁子 犯罪はわたしたちの身近なところに

阿部暁子初の単行本、社会派ミステリ 2022年刊行作品。作者の阿部暁子(あべあきこ)は1985年生まれの小説家。集英社が主宰していた公募文学賞「ロマン大賞」で、『いつまでも』(書籍刊行時のタイトルは『屋上ボーイズ』)が大賞を受賞し、2008年に作家デビ…

『君のクイズ』小川哲 奇跡の「ゼロ文字押し」は可能なのか?

2023年、本屋大賞ノミネート作品 2022年刊行作品。作者の小川哲(おがわさとし)は1986年生まれの小説家。2015年、第3回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞した『ユートロニカのこちら側』がデビュー作である。 既刊は以下の通り。 ユートロニカのこちら側(2…

『残月記』小田雅久仁 月はそれぞれの人間の心の闇に昇ってくる

日本SF大賞受賞作 2021年刊行作品。双葉社の小説誌「小説推理」に2016年~2019年にかけて、散発的に掲載されていた三編の作品をまとめたもの。 作者の小田雅久仁(おだまさくに)は1974年生まれの小説家。2003年に『影舞(未刊)』が、第15回日本ファンタジ…

『嘘つきなふたり』武田綾乃 “正解を選ぶだけの人生”からの逃避行

友情と嘘の物語 2022年刊行作品。作者の武田綾乃(たけだあやの)は1992年生まれの小説家。代表作はいうまでもなく2013年の『響け! ユーフォニアム』だろう。武田綾乃は同シリーズだけで10作以上の著作があるが、非ユーフォニアム系のノンシリーズも、手堅…

『Y田A子に世界は難しい』大澤めぐみ AIと人間の境界線はどこにあるのか?

大澤めぐみの一般レーベル第二作 2021年刊行作品。大澤めぐみの商業出版作品、第六作目。一般レーベル(光文社文庫)からの作品としては、『彼女は死んでも治らない』に続く第二作となる。ちなみに、タイトルの『Y田A子に世界は難しい』の読みは「わいだえい…

『女彫刻家』ミネット・ウォルターズ 血まみれのオブジェを作り上げた女の秘密

ミネット・ウォルターズ、二番目の作品 1995年刊行作品。『氷の家(The Ice House)』に続く、ミネット・ウォルターズ(Minette Walters)の第二作。オリジナルの英国版は1993年に刊行されていて、原題は『The Sculptress』。アメリカ探偵作家クラブによるエド…

『新本格魔法少女りすか4』西尾維新 17年かけてついにシリーズ完結!

「りすか」シリーズついに最終巻! 2020年刊行作品。『新本格魔法少女りすか』『新本格魔法少女りすか2』『新本格魔法少女りすか3』に続く、「りすか」シリーズの四作目。2004年に始まった「りすか」シリーズが17年の歳月をかけて遂に完結した。西尾維新やれ…

『タイム・リープ あしたはきのう』高畑京一郎 平成の名作が新装版で再文庫化!

平成の名作が復刊 作者の高畑京一郎(たかはたきょういちろう)は1967年生まれのライトノベル作家。第1回電撃ゲーム小説大賞の金賞を受賞した、1994年の『クリス・クロス 混沌の魔王』がデビュー作。電撃ゲーム小説大賞系の作品でありながら、いきなり文庫で…

『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』白井智之 奇跡VS探偵のロジック

2022年のミステリ界を席巻! 2022年刊行作品。作者の白井智之(しらいともゆき)は1990年生まれのミステリ作家。デビュー作は2014年の『人間の顔は食べづらい』。同作は第34回の横溝正史ミステリ大賞の最終候補作のひとつであった。 『名探偵のいけにえ』は…

『早朝始発の殺風景』青崎有吾 高校生たちの気まずい密室

青春は気まずさでできた密室 2019年刊行作品。集英社の小説誌「小説すばる」に2016年~2018年にかけて掲載されていた作品をまとめたもの。「エピローグ」部分は単行本刊行時の書き下ろしとなっている。第73回日本推理作家協会賞の、長編および連作短編集部門…

『アホウドリの迷信 』岸本佐知子・柴田元幸セレクトによる、現代英語圏異色短編コレクション

魅惑の異色短編アンソロジー 2022年刊行作品。編者にして翻訳を担当しているのは、岸本佐知子(きしもとさちこ)と、柴田元幸(しばたもとゆき)の両名。 本書は、柴田元幸が編集長を務める文芸誌「MONKEY」の第23号で企画された特集「ここにいいものがある…

『竜殺しのブリュンヒルド』東崎惟子 神にやり直す機会を与えられても、私は同じ道を選ぶ

第28回電撃小説大賞、銀賞受賞作 2022年刊行作品。作者の東崎惟子(あがりざきゆいこ)は、本作『竜殺しのブリュンヒルド』がデビュー作となる。数々の人気作家を世に送り出してきた、電撃小説大賞の銀賞受賞作品だ。続篇としては『竜の姫ブリュンヒルド』が…

『壬生義士伝』浅田次郎 守銭奴と蔑まれた新撰組隊士の物語

浅田次郎、初の歴史小説 2000年刊行作品。もともとは「文藝春秋」誌に1998年~2000年にかけて連載されていたもの。タイトルの『壬生義士伝』は「みぶぎしでん」と読む。 日本を舞台とした歴史小説は、浅田次郎(あさだじろう)としては初めての作品となる。…

『鉄の枷』ミネット・ウォルターズ 中世の拘束具を被せられた死体の謎

ミネット・ウォルターズの三作目 オリジナルの英国版は1994年刊行で、原題は『The Scold's Bridle』。邦訳版は1996年に登場している。 鉄の枷 作者:ミネット ウォルターズ 東京創元社 Amazon わたしが読んだのは2002年に刊行された創元推理文庫版である。 作…

『隣り合わせの灰と青春』ベニー松山 「ウィザードリィ」の世界を完全再現

ファミコンゲーム「ウィザードリィ」のノベライズ 30年以上前に刊行された作品だが、未だ色褪せないゲームノベライズの先駆にして、その域をはるかに超えてしまった大傑作がベニー松山の『隣り合わせの灰と青春』である。作者のベニー松山は1967年生まれの小…

『invert II 覗き窓の死角』相沢沙呼 城塚翡翠シリーズの三作目

翡翠ちゃんシリーズの三冊目! 2022年刊行作品。サブタイトルの『覗き窓の死角』には「ファインダーのしかく」とルビが振られている。「のぞきまどのしかく」ではないので気をつけたい。 表紙イラストは、前作、前々作に引き続き、ヒットメーカー遠田志帆(…

『此の世の果ての殺人』荒木あかね 終末の世界、女性バディモノ✖ロードノベルの魅力

史上最年少、選考委員満場一致の乱歩賞受賞作 2022年刊行作品。作者の荒木あかねは1998年生まれのミステリ作家。本作『此の世の果ての殺人(このよのはてのさつじん)』で第68回の江戸川乱歩賞を受賞し、作家としてのデビューを果たしている。受賞当時23歳は…

『楽園とは探偵の不在なり』斜線堂有紀 二人殺せば地獄行きの世界で連続殺人は可能か?

斜線堂有紀、初のハードカバー作品? 2020年刊行作品。作者の斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)は1993年生まれ。『キネマ探偵カレイドミステリー』で電撃小説大賞の「メディアワークス文庫賞」を受賞し、2017年に作家デビューを果たしている。 当初はメディ…

『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』コニー・ウィリス 時間モノの傑作

ヒューゴー賞・ローカス賞ダブル受賞作 2004年刊行作品。作者のコニー・ウィリス(Connie Willis)は1945年生まれのアメリカ人エスエフ作家。 オリジナルの米国版は1998年に刊行されている。原題は『To Say Nothing of the Dog』。ヒューゴー賞・ローカス賞受賞…

『その意図は見えなくて』藤つかさ 安楽椅子探偵には解決できないことがある

藤つかさのデビュー作 2022年刊行作品。作者の藤(ふじ)つかさは、1992年生まれのミステリ作家。2020年の「見えない意図」(単行本収録時に「その意図は見えなくて」に改題されている)が、第42回の小説推理新人賞を受賞し作家デビューを果たす。 本書『そ…

『煙か土か食い物』舞城王太郎 第19回メフィスト賞受賞作

舞城王太郎衝撃のデビュー作 2001年刊行作品。第19回のメフィスト賞受賞作品である。舞城王太郎(まいじょうおうたろう)最初の作品である。舞城王太郎は1973年生まれで、福井県出身。しかし、それ以外の経歴は一切公表されていない覆面作家である。 本作は…

『#真相をお話します』結城真一郎 想像を超えた「真相」に震撼せよ!

日本推理作家協会賞、受賞作を収録 2022年刊行作品。作者の結城真一郎(ゆうきしんいちろう)は1991年生まれのミステリ作家。2018年に『スターダスト・ナイト』(刊行時のタイトルは『名もなき星の哀歌』)が第5回新潮ミステリー大賞を受賞し作家としてのデビ…

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼 「すべてが伏線」は伊達じゃない

三冠獲得!2019年を代表するミステリ作品『medium 霊媒探偵城塚翡翠』のネタバレ感想。相沢沙呼の代表作にないそうですね。 作中に周到に張り巡らされた伏線の数々について考察してみました。

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午 事前情報なしで一気に最後まで読んで欲しい名作

2003年の国内ミステリ界を席巻した名作 2003年刊行作品。この年の「 このミステリーがすごい! 」と「本格ミステリベスト10」でいずれも第一位。「週刊文春 推理小説ベスト10」では第二位。更に第4回本格ミステリ大賞と、第57回の日本推理作家協会賞を受賞し…