ネコショカ

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『殴り合う貴族たち』繁田信一
藤原実資「小右記」から読む平安貴公子のご乱行

SF

『ペロー・ザ・キャット全仕事』吉川良太郎 第二回の日本SF新人賞受賞作品

吉川良太郎のデビュー作 2001年刊行作品。第二回日本SF新人賞受賞作。作者の吉川良太郎(よしかわりょうたろう)は1976年生まれのエスエフ作家。本作、『ペロー・ザ・キャット全仕事』がデビュー作となる。 日本SF新人賞は日本SF作家クラブが主催し、徳間書店…

『裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル』宮澤伊織 少しづつ距離を縮めていく空魚と鳥子

「裏世界ピクニック」シリーズの第五弾 2020年刊行作品。『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』『裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト』『裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ』『裏世界ピクニック4 裏世界夜行』に続くシリーズ第五弾である…

『航路』コニー・ウィリス 臨死体験と死後の世界

驚愕の超絶展開が楽しめる一作 2002年刊行作品。単行本版はソニーマガジンズから。 作者のコニー・ウィリス(Constance Elaine Trimmer Willis)は1945年生まれのアメリカ人SF作家である。 原著『PASSAGE』は2001年に米国で刊行されている。米国ローカス賞のS…

『感応グラン=ギニョル』空木春宵 たぐいまれな奇想、傷みと呪縛からの解放をえがく

空木春宵、初の作品集 2021年刊行作品。東京創元社のミステリ誌『ミステリーズ!』や、アンソロジーシリーズ「GENESiS」、Webメディアの「Webミステリーズ!」などに掲載されていた作品を単行本化したもの。早川書房の『SFが読みたい! 2022年版』の「ベストSF…

『ねじの回転』恩田陸が描く226事件、そして運命への挑戦

エスエフ作品の刊行が相次いだ2002年の恩田陸作品 2002年刊行作品。集英社「小説すばる」に2000年11月号から2002年1月号にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。サブタイトルは「FEBRUARY MOMENT」。 ねじの回転 FEBRUARY MOMENT 作者:恩田 陸 集英…

『天の光はすべて星』フレドリック・ブラウン 宇宙に憑かれた男は夢をかなえられたのか

邦題タイトルがかっこいい! 1953年作品。オリジナルの米国版のタイトルは『The Lights in the Sky Are Stars』。 筆者のフレドリック・ブラウン(Fredric William Brown)は1906年生まれのアメリカ人作家。1972年に亡くなられている。 最初のハヤカワ文庫版1…

「おれはミサイル」「海原の用心棒」秋山瑞人の文庫未収録作品を紹介

ライトノベルの軛から解き放たれた秋山瑞人作品 先日の『龍盤七朝 DRAGONBUSTER 02』で秋山瑞人(あきやまみずひと)の全6作14冊の作品レビューを終えた。しかし、秋山瑞人には文庫に収録されていない作品が二つある。本日この二作についてご紹介したい。 秋…

『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー 善い者として火を運ぶということ

コーマック・マッカーシー『ザ・ロード(The Road)』のあらすじ、ネタバレ感想。終末の世界を旅する、一組の親子の物語です。

『猫の地球儀』秋山瑞人 知性を持った猫たちの切ない物語

秋山瑞人『猫の地球儀』(電撃文庫、2000年作品)のネタバレ感想、あらすじ、考察などを載せています。

『レキオス』池上永一 千年の眠りから覚める沖縄の封印

池上永一の第四作 2000年刊行。『バガージマヌパナス』『風車祭』『復活、へび女』(後に改題されて『あたしのマブイ見ませんでしたか』)に続く池上永一の四作目である。 早川書房の『SFが読みたい!』2001年版で、国内部門の第2位にランクイン。2001年版の…

『グレイ・チェンバー』小川一水 ジャンプジェイブックスレーベルでの刊行作品

ジャンプジェイブックス時代の小川一水作品 小川一水(おがわいっすい)は、河出智紀名義で1996年10月に『まずは一報ポプラパレスより』を上梓していて実質的にはこれがこの作家のデビュー作。続いて『まずは一報ポプラパレスより2』 が1998年の4月に出てお…

『盗まれた街』ジャック・フィニィ 四回も映画化されている古典エスエフの名作

ジャック・フィニイの代表作 1979年刊行作品。作者のジャック・フィニイは1911年生まれのアメリカ人エスエフ作家。1995年に亡くなられている。オリジナルの米国版は1955年の作品で原題は『The Body Snatchers』 盗まれた街 (ハヤカワ文庫 SF 333) 作者:ジャッ…

『三体3 死神永生』劉慈欣 時空の果て、わたしたちの星、わたしたちの宇宙

三体シリーズ三部作の完結編 2021年刊行作品。オリジナルである中国版は2008年に刊行。『三体』『三体2 暗黒森林』の続編。劉慈欣(りゅうじきん/リウツーシン)による三体(地球往事)シリーズ三部作の最終作にあたる。死神永生は「ししんえいせい」と読む…

『BH85』森青花 養毛剤から始まる人類滅亡、第11回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞作品

日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞作品 1999年刊行作品。第11回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品。作者の森青花(もりせいか)は1958年生まれ。第二作は2003年の『さよなら』。 表紙イラストは吾妻ひでお。インパクト強いなあこの表紙は。新井…

『Alice(アリス)』川崎康宏 物騒なヒロインがあれこれ頑張るお話

川崎康宏の電撃文庫作品 2004年刊行作品。作者の川崎康宏(かわさきやすひろ)は1968年生まれのライトノベル作家。第5回の富士見ファンタジア長編小説大賞に『銃と魔法』が準入選し、同作で1994年に富士見ファンタジア文庫からデビューを果たす。銃の世界と…

『老ヴォールの惑星』小川一水 硬軟取り混ぜた第一短編集

小川一水の初期作品集 2005年刊行。ベストSF2005国内部門第一位の作品。小川一水(おがわいっすい)としては、初の短編集となる。 初出は「ギャルナフカの迷宮」が同人誌「Progressive25」。「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱船」が「SFマガジン」。最後の…

『天槍の下のバシレイス まれびとの棺』伊都工平 生活水準が1960年代レベルまで退行した世界での学園バトルもの

伊都工平の第二作 『天槍の下のバシレイス(てんそうのしたのバシレイス)』は2004年刊行作品。今は亡きメディアワークスのライトノベル小説誌「電撃hp」のvol28~31に連載されていた作品に追加短編三本。更に最終章の書き下ろしが追記されたもの。上下巻…

『カント・アンジェリコ 』高野史緒 カストラートの歌声と、絶対王政時代のハッキングバトル

高野史緒の第二作 1996年刊行作品。第6回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『ムジカ・マキーナ』に続く、高野史緒(たかのふみお)の第二作。 単行本版の刊行から二十年近く、長期にわたって入手困難な状態が続いていたが、講談社文庫版が2013…

『E.G.コンバット』秋山瑞人、未完のデビュー作、『E.G. Final』はいつ出るんだ~

秋山瑞人、未完の大作「E.G.コンバット 」1~3のあらすじと感想。完結編Finalについての情報についても書きました。

『さよならも言えないうちに』川口俊和 「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの四作目!

シリーズ、三年ぶりの新作 2021年刊行作品。『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』に続くシリーズ四作目。三年ぶりの新作である。川口俊和(かわぐちとしかず)の小説作品としては本作が四冊目。この人、このシ…

『鉄(くろがね)コミュニケイション』秋山瑞人の第二作はノベライズの域を超えた傑作!

電撃G's文庫から電撃文庫に移籍した作品 1998年刊行。『鉄(くろがね)コミュニケイション』は秋山瑞人(あきやまみずひと)の第二作品である。 最初は電撃文庫で、美少女系のノベライズ等を専門に出していた電撃G's文庫から世に出ている。それがこちら。1巻…

『クリスタルサイレンス』藤崎慎吾 ベストSF1999国内部門第1位作品

SF

藤崎慎吾のデビュー作品 1999年作品。単行本版は朝日ソノラマから刊行。早川書房のベストSF1999(「SFが読みたい2000」)では『グッドラック 戦闘妖精・雪風』を抑えて国内部門第1位に輝いている。 作者の藤崎慎吾(ふじさきしんご)は1962年生まれの小説家…

『吹け、南の風』秋山完 圧倒的な敵勢力VS不正規部隊の戦いを描く良作

秋山完の大長編作品 今週のお題「読書の秋」に引き続き便乗。本日は秋山完(あきやまかん)の大長編作品『吹け、南の風』全三巻を一気にご紹介したい。 『吹け、南の風』は2001年~2003年にかけて、今は亡きソノラマ文庫から刊行されたエスエフシリーズ。秋…

『<柊の僧兵>記』菅浩江のデビュー二作目

ソノラマ文庫版とデュアル文庫版がある 1990年刊行作品。最初はソノラマ文庫からの登場。この時の表紙イラストは加藤洋之(かとうひろゆき)&後藤啓介(ごとうけいすけ)。『ゆらぎの森のシエラ』に続く、菅浩江(すがひろえ)の第二作である。ちなみに『<…

『導きの星』小川一水 異種文明を見守る公務員が主人公、全四巻を一気に紹介

小川一水作品はここからガチ 2002年刊行作品。ハルキ文庫のヌーヴェルSFシリーズからの登場。全四巻の『導きの星』シリーズを、「1目覚めの大地」「2争いの地平」「3災いの空」「4出会いの銀河」と、順に紹介していきたい。 本作刊行に至るまで、ライトノベ…

『クロノス・ジョウンターの伝説』梶尾真治 7回書籍化された人気作品

四半世紀の間に7冊! もともとは1994年に朝日ソノラマより刊行されていた作品。朝日ソノラマの、今は亡き小説誌『グリフォン』に掲載されていた作品(「吹原和彦の軌跡」に相当)に、「布川輝良の軌跡」を追加したもの。 クロノス・ジョウンターの伝説 作者:…

『復活の地』小川一水 大震災からの復興物語

小川一水による大都市災害復興シミュレーション 本日は小川一水(おがわいっすい)による『復活の地』全三巻の感想を一気にお届けしたい。『復活の地』は2004年刊行。ベストSF2004国内部門第三位の作品である。 『復活の地』はエスエフ仕立ての大都市災害復…

『天象儀の星』秋山完の初期作品集を堪能する

最初期の秋山完作品を楽しめる 秋山完(あきやまかん)は1995年の『ラストリーフの伝説』がデビュー作。作品数は現時点で11作。良い作品をいくつも書いている作家さんなのだけど、2005年の『プリンセスの義勇海賊(シュバリエ)』以降新作が無いのがとても残…

『ネリマ大好き』新井素子 練馬生まれ、練馬育ち、練馬在住民による練馬大好きエッセイ

濃厚な練馬愛に包まれる至福?の一冊 1992年刊行作品。作者の新井素子は練馬生まれの練馬育ち。高校は練馬区上石神井にある井草高校で、大学は立教。西武池袋線文化圏にどっぷり浸かって生きてきたような人間で、とにかく地元大好き。濃厚なネリマ愛が全編に…

『思い出が消えないうちに』川口俊和 明日世界が終るとしても

三年ぶりのシリーズ最新作『さよならも言えないうちに』が出たので、過去記事を再プッシュ。本日はシリーズ三作目の『思い出が消えないうちに』を再度ご紹介したい。 不思議な喫茶店の物語第三弾 2018年刊行作品。『コーヒーの冷めないうちに』『この嘘がば…