ネコショカ

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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

ミステリ

『レモンと殺人鬼』くわがきあゆ 全キャラ怪しい!手に汗握る終盤の展開に注目!

「このミステリーがすごい!」大賞文庫グランプリ受賞作 2023年刊行作品。英題は「Lemon and murderer」とわりとそのまんま。作者のくわがきあゆは1987年生まれの小説家。2021年に『焼けた釘』で、産業編集センターが公募した第8回の「暮らしの小説大賞」を…

『おまえなんかに会いたくない』乾ルカ 10年後の同窓会、スクールカーストの闇を描く

乾ルカが描くスクールカーストモノ 2021年刊行。書下ろし作品。作者の乾ルカ(いぬいるか)は1970年生まれ。短編「夏光」(なつひかり)が、2006年の文藝春秋のオール讀物新人賞を受賞。作家デビューを果たしている。著作数は二十作を優に超えるが、恥ずかし…

『ちぎれた鎖と光の切れ端』荒木あかね 孤島に取り残された八人の男女、そして……。

荒木あかね、乱歩賞受賞後一作目 2023年刊行作品。2022年に『此の世の果ての殺人』で最年少の江戸川乱歩賞受賞を果たした、荒木あかね待望の第二作となる。『此の世の果ての殺人』は週刊文春のミステリベストテンで第5位にランクインされるなど高い評価を受…

『盤上に君はもういない』綾崎隼 ただひたすらに「愛の物語」だった!

綾崎隼が将棋小説に挑戦 2020年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。作家デビューは2010年。電撃小説大賞で選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)。メディアワークス文庫を中心に、二十冊以上の著作が…

『可燃物』米澤穂信 本格ミステリ×警察小説×群馬県の魅力

米澤穂信の警察小説が登場 2023年刊行作品。文芸春秋の刊行するエンタテイメント系小説誌「オール讀物(よみもの)」に2020年~2023年にかけて、散発的に掲載されていた作品を単行本化したもの。本作には、米澤穂信(よねざわほのぶ)作品のお約束として英題…

『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』斜線堂有紀 愛する人の死が三億の価値を持つとしたら?

斜線堂有紀の第五作品 2019年刊行作品。『私が大好きな小説家を殺すまで』に続く、斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)の第五作。 個人的に『私が大好きな小説家を殺すまで』から始まる、『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』、『恋に至る病』の三作を、…

『スイッチ 悪意の実験』潮谷験 第63回メフィスト賞受賞作品

潮谷験のデビュー作 2021年刊行作品。作者の潮谷験(しおたにけん)は1978年生まれ。本作『スイッチ 悪意の実験』で第63回のメフィスト賞を受賞し、作家デビューを果たしている。 スイッチ 悪意の実験 作者:潮谷 験 講談社 Amazon 講談社文庫版は2023年に刊…

『Q&A』恩田陸 質問と答えだけで物語が進行する不思議な作品

謎が謎を呼ぶ奇妙な物語 2004年刊行作品。幻冬舎の文芸雑誌「星星峡」の2002年4月号から2004年3月号にかけて掲載されていた作品を単行本化したものである。 単行本版はベージュの地にタイトルと作者名のみと至ってシンプルな装丁で、一瞬どこかの高校の文芸…

『十戒(じっかい)』夕木春央 『方舟』はブラフじゃなかった!今回も抜群の面白さ

夕木春央の第五作 2023年刊行作品。作者の夕木春央(ゆうきはるお)は1993年生まれのミステリ作家。 デビュー作は2019年のメフィスト賞受賞作『絞首商會(こうしゅしょうかい)』。第二作は2021年の『サーカスから来た執達吏(しったつり)』。そして、2022…

『夏の王国で目覚めない』彩坂美月 ひと夏のクローズドサークルツアー

彩坂美月の第三作、本格ミステリ大賞の候補作 2011年刊行作品。作者の彩坂美月(あやさかみつき)は1981年生まれのミステリ作家。デビュー作は2009年の『未成年儀式』(富士見ヤングミステリー大賞に準入選、後に改稿改題の上で『少女は夏に閉ざされる』とし…

『ノワール・レヴナント』浅倉秋成 特殊能力を持つ四人の高校生が事件の謎に迫る

浅倉秋成のデビュー作 『ノワール・レヴナント』は2012年刊行作品。講談社のライト文芸レーベル、講談社BOXが実施していた公募新人賞「講談社BOX新人賞"Powers"」の第13回受賞作。浅倉秋成(あさくらあきなり)のデビュー作だ。「講談社BOX新人賞"Powers"」は…

『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光 電子書籍では味わえない至福の読書体験がここに!

20万部突破の大ヒット作に! 作者の杉井光(すぎいひかる)は1978年生まれ。デビュー作は2006年の『火目の巫女(ひめのみこ)』。第二作の『神様のメモ帳』はアニメ化もされて、シリーズ累計100万部を超える大ヒット作に。第三作の『さよならピアノソナタ』…

『アンデッドガール・マーダーファルス3』青崎有吾 人狼の里で起きた連続殺人事件の謎

「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの三作目 2021年刊行作品。『アンデッドガール・マーダーファルス1』『アンデッドガール・マーダーファルス2』続く、青崎有吾(あおさきゆうご)による「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの第三作に…

『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成 六つの告発文×密室の心理戦が熱い!

浅倉秋成はこれで大ブレイク! 2021年刊行作品。『ノワール・レヴナント』『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト(失恋の準備をお願いします)』『教室が、ひとりになるまで』『九度目の十八歳を迎えた君と』に続く浅倉秋成(あさくらあきなり…

『白の闇』ジョセ・サラマーゴ ノーベル賞作家が描く視力を奪う感染症の恐怖

ノーベル文学賞受賞者が描く感染症小説 筆者のジョセ・サラマーゴ(José de Sousa Saramago)は1922年ポルトガル生まれの作家。1998年にはノーベル文学賞を受賞。2010年に87歳で没している。 『白の闇』のオリジナル版は1995年刊。原題は『Ensaio sobre a ceg…

『黒と茶の幻想』恩田陸 美しい謎と非日常の島、そして旅路の果て

恩田陸作品最長クラスの長編 講談社のミステリ雑誌「メフィスト」の、2000年5月号~2001年9月号に連載されていた作品を単行本化したもの。本作は『三月は深き紅の淵を』の系譜に連なる作品の一つで、その第一章「待っている人々」の中で言及されている。本作…

『ノッキンオン・ロックドドア2』青崎有吾 御殿場倒理と片無氷雨、二人の過去が明らかに

ノッキンオン・ロックドドアシリーズの二作目 2019年刊行作品。徳間書店の小説誌「読楽(どくらく)」に2017年~2019年にかけて掲載されていた作品と、ネット掲載されていた作品、更に書下ろし一編を加えて単行本化したもの。『ノッキンオン・ロックドドア』に…

『ライオンハート』恩田陸 時空を超えて何度も廻り逢う男女の物語

20世紀最後に刊行された恩田陸作品 新潮社の小説誌『小説新潮』に1990年~2000年にかけて掲載された、五編の作品をまとめたもの。奇しくも連載中にSMAPの「らいおんハート」発売されているが、関係はない。 単行本版は2000年12月に刊行された。個人的には20…

『リカーシブル』米澤穂信 崩壊していく家族と残された絆

米澤穂信、二年ぶりの長編作品(当時) 2013年刊行作品。『小説新潮』に2011年12月号から2012年8月号に連載されていた作品を単行本化したもの。 「週刊文春ミステリーベスト10」2013年で第18位、「このミステリーがすごい!」2014年および「本格ミステリ・ベ…

『向日葵を手折る』彩坂美月 少女の四年間の成長物語

少女たちの四年間を綴った物語 2020年刊行作品。タイトルの読みは「ひまわりをたおる」。彩坂美月(あやかさかみつき)としては九作目の作品となる。 実業之日本社の文芸誌「紡」の2013年autumn号、2013年winter号、2014年spring号、2014年summer号に連載さ…

『アンデッドガール・マーダーファルス2』青崎有吾 ルパンにホームズ、著名キャラ勢揃いのバトルロワイアルが楽しい!

「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの二作目 2016年刊行作品。前年に刊行された『アンデッドガール・マーダーファルス1』の続篇となる。青崎有吾(あおさきゆうご)による「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの第二作だ。 表紙イラス…

『ノッキンオン・ロックドドア』青崎有吾 不可能専門&不可解専門、個性の異なる二人の探偵が謎を解く

ノッキンオン・ロックドドアシリーズの一作目 2016年刊行作品。徳間書店の小説誌「読楽(どくらく)」に2014年~2015年にかけて掲載されていた作品に、書下ろし一編を加えて単行本化したもの。青崎有吾(あおさきゆうご)のシリーズものとしては、裏染天馬シ…

『カルチェ・ラタン』佐藤賢一 16世紀のパリを舞台とした連作短編小説

16世紀のパリを舞台とした成長物語 2000年刊行作品。佐藤賢一(さとうけんいち)、七作目の作品。サトケンお得意のフランスモノである。 カルチェ・ラタン 作者:佐藤 賢一 集英社 Amazon 集英社文庫版ハ2003年に刊行されている。 不勉強にして知らなかったの…

『アンデッドガール・マーダーファルス1』青崎有吾 怪物専門の探偵“鳥籠使い”が謎を解く

「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの一作目 2015年刊行作品。書下ろし。作者の青崎有吾(あおさきゆうご)は1991年生まれのミステリ作家。本作は裏染天馬シリーズに続く、青崎有吾としては第二のシリーズ作品。講談社のライト文芸レーベル、講…

『螢』麻耶雄嵩 ファイアフライ館に行ってみたい!

2005年本格ミステリ・ベスト10で第3位 2004年刊行作品。このミス2005年版国内第11位、本格ミステリ・ベスト10では3位にランクインされている。同年に刊行された作品としては『名探偵木更津悠也』がある。 本作は麻耶雄嵩(まやゆたか)作品ではあるがメルカ…

『リロ・グラ・シスタ』詠坂雄二 KAPPA-ONE登龍門の最終受賞作

詠坂雄二のデビュー作 2007年刊行作品。光文社版のメフィスト賞とも言える、公募新人賞KAPPA-ONE登龍門(かっぱわんとうりゅうもん)受賞作である。KAPPA-ONE登龍門は2002年にスタートし、石持浅海『アイルランドの薔薇』、東川篤哉『密室の鍵貸します』らを…

『罪・万華鏡』佐々木丸美 罪はいつも善の影、人間心理の不可解さを描く

最後から二番目の佐々木丸美作品 1983年刊行作品。佐々木丸美の16作目。佐々木丸美の作品は17作しかないので、最後から二番目、最後期の作品ということになる。 罪・万華鏡 作者:佐々木 丸美 講談社 Amazon この講談社版の『罪・万華鏡』は文庫化されなかった…

『理由』宮部みゆき 六度目の正直での直木賞受賞作

宮部みゆきの直木賞受賞作 1998年刊行作品。「朝日新聞」夕刊に1996年~1997年にかけて連載されていた作品を加筆したうえで刊行したもの。 第120回直木三十五賞受賞作。更に同年の「週刊文春ミステリーベスト10」国内編一位。「このミステリーがすごい!」国…

『緋色の記憶』トマス・H・クック 追憶の中の物語

アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)受賞作 1998年刊行。オリジナルの米国版は1996年刊行で原題は「The Chatham School Affair」。作者のトマス・H・クック(Thomas H. Cook)は1947年生まれのアメリカ人作家。 1997年度のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー…

『虹の涯(はて)』戸田義長 天狗党の藤田小四郎を主人公とした歴史ミステリ

戸田義長の第三作 2022年刊行作品。作者の戸田義長(とだよしなが)は1963年生まれのミステリ作家。 2017年、第27回鮎川哲也賞に応募した『恋牡丹』が最終候補作となったものの、惜しくも選外に(この年の鮎川賞は今村昌弘の『屍人荘の殺人』だった)。同作…